文春オンライン

source : 週刊文春WOMAN 2019GW号

genre : エンタメ, 芸能, ライフスタイル, テレビ・ラジオ, 働き方

信用に足りる家族だと世間に証明してきた夫婦

 数年前、テレビに電話出演した誉幸氏は「KIMIJIMAは倒産ではなく、廃業です」と主張した。取引先に迷惑を掛ける倒産と、負債を整理し事業を終了する廃業では雲泥の差がある。事業継承時、誉幸氏はまだ31歳だった。

 二人の結婚後、君島一郎氏は週刊誌のインタビューで「これだけ騒がせたのだから、誰にも迷惑を掛けない夫婦になって欲しい」と言った。そもそもの発端はどこだとツッコミたくもなるが、誉幸氏はその言葉を守ったのだろう。十和子も長女が幼稚園の受験に合格した時、初めて世間に認められたような気がして涙を流したという。

 君島一郎氏の没後からずっと、夫婦は自分たちが信用に足りる家族だと世間に証明してきたように思う。

©️iStock.com

 類まれなる美貌も恵まれた環境も自ら選んだものではない。しかし、「美人だから」、「御曹司だから」と分不相応な役目を与えられ、同時に「あなたにできるの?」と品定めをされる。

 与えられた環境に感謝し、最善を尽くしたところで世間は簡単には認めない。彼らは証明し続けなければならなかった。

「結婚するしないで騒がれている時に、見ず知らずの人から脅しのような手紙が山ほど来ました。その一方で、独占インタビューや出版を持ちかけられ、あり得ない金額を提示してくる人もいた。世の中の裏と表、日向と日陰を一度に目にすることができ、なんとかブレずに初志貫徹できたなと思うこともあります」

 簡単に別れるわけなどなかった。十和子の座右の書は、障害者郵便制度悪用事件であらぬ容疑を掛けられ、164日間の勾留の末に無罪を勝ち取った村木厚子の『あきらめない』だ。

「人事を尽くして天命を待つ」から「人間万事塞翁が馬」に

 仕事に没頭し過ぎてしまうこともあるが、朝5時半に起きて、部活の朝練がある高校生の次女の弁当を作るのは忘れない。

 義母はケアホームに居を移した。

「大病を2度も克服し、食事にも制限がある。老いる現実をつぶさに見せてくれるのも義母の愛だと思っています」

illustration:Keiko Nasu

 年を経て、十和子の好きな言葉は「人事を尽くして天命を待つ」から「人間万事塞翁が馬」に変わった。

「出会った人と、出会った出来事で成り立っている。そう思えるようになって変わりました。いろいろありましたけど、おかげでいまだに顔と名前を覚えていただいているんですから」

 君島十和子、なんとタフな女だろう。

きみじまとわこ/1966年東京都生まれ。85年、高校在学中にJAL沖縄キャンペーンガールに選ばれデビュー。『JJ』モデルを経て女優として活躍。結婚を機に芸能界を引退。2005年、化粧品ブランド「FELICE TOWAKO COSME(現・FTC)」を立ち上げる。

ジェーン・スー/作詞家・ラジオパーソナリティ・コラムニスト。『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』(幻冬舎)で講談社エッセイ賞を受賞。近著に『これでもいいのだ』(中央公論新社)、『揉まれて、ゆるんで、癒されて 今夜もカネで解決だ』 (朝日文庫)。TBSラジオ「ジェーン・スー 生活は踊る」(月~金11:00~13:00)が放送中。

週刊文春WOMAN vol.2 (2019GW号)

 

文藝春秋

2019年4月26日 発売

 

ツイッターをフォローして最新記事をいち早く読もう

週刊文春WOMANをフォロー