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私が「孤独死のミニチュア」を作り続ける理由――遺書と、壁に「ゴメン」の3文字が残された部屋

遺品整理人・小島美羽さんインタビュー #1

2020/07/26
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ごみ屋敷を見て、「わたしはこうはならないわ」と言った女性

――小島さんは、掃除や整理を通してそれぞれの部屋の状態と向き合い、「物」からそこに住んでいた人たちの人物像を描き出していきます。小島さんがミニチュアを最初に発表する場になった「エンディング産業展」で「ごみ屋敷」のミニチュアを見た女性が「わたしはきれい好きだから、こうはならないわ」と言ったそうですね。

小島 あのミニチュアを見て、「わたしはこうはならない」と思う方は多いんですよ。逆説的なのですが、あのごみ屋敷のミニチュアは、「誰にでも起こりうることだ」と知ってもらうために作ったものです。今は平気かもしれないけど、何か思いもよらないような経験をして、自分が壊れて保てなくなったときに、ごみを捨てる気力がなくなることはあり得る。「わたしは違う」とは誰も言い切れないと思います。

「ごみ屋敷」のミニチュア ©Hajime Kato

 わたしが訪れた部屋でも、うつ状態になってしまった方、離婚やリストラが原因でごみを溜め込んでしまった方、ストーカー被害に遭った経験から怖くてごみが出せなくなってしまったという方もいました。女性の方も多いです。こっそり引っ越し風にしてごみを出してほしいという依頼もあります。

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――ご本人からの依頼もあるんでしょうか。

小島 存命の場合は、ご本人さまからの依頼が大半です。ただ、お電話をいただく時点では「うちの弟が」「お兄さんが」っておっしゃるんですけど、行ってみるとその部屋に住んでいる人にしかわからない癖みたいなものが垣間見える時があります。携帯電話を置く場所が決まっているとか、そういう些細なことです。あえてこちらから言うことはないですし、「ご本人さまなんだな」と胸の中で思うだけです。

――著書ではごみ屋敷の共通点として、壁側からごみが積み上がっていき、だんだん布団の周りなど自分の定位置にまで広がっていくことが書かれていましたが、溜まっていくごみの種類にも何か傾向はありますか?

小島 人によりますが、2パターンあるかなと思います。わたしたちは「ぬれているごみ」「乾いているごみ」と呼び分けています。ぬれているのは、生ごみ系です。食べ残しや、尿が入ったペットボトルが100本以上あることも。乾いているのは、生ごみではなく空の袋や何も入っていないペットボトルなどのことで、足を踏み込むとふんわりと沈むような感覚があります。

©Hajime Kato

「乾いているごみ」が多い部屋の特徴は、ごみよりも物が多く、段ボールや服、それらが何なのか見分けがつかないくらい物にあふれている。買い物依存症のような方もいます。ごみ屋敷のミニチュアではごみで部屋の半分くらいまで埋まっていますが、これも人それぞれで、足首くらいまでの場合もあれば、天井近くまでごみが積み上がっていることもあります。