30代俳優の訃報に、悲しみの声が寄せられている。自宅で亡くなった故人の部屋を片づけ、弔いつづける「遺品整理人」の小島美羽(みゆ)さんは、依頼現場の特徴やオリジナルのアイディアを組み合わせ、これまでに9点のミニチュアを制作してきた。その中には若者の自死のあと、遺書とともに壁に「ゴメン」の文字が残された部屋の作品もある。
小島さんにとって、作品ごとにテーマを決めて作り上げるミニチュアは、「孤独死は誰にでも起こりうる。だからこそ知ってほしい」という思いを伝えるためのツールだ。今後はどんな作品を作ろうと考えているのか。文化人類学を専門とする研究者・北川真紀さんが聞いた。(全2回の1回目/#2に続く)
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訪れた自殺の現場は30代が多かった
――小島さんはミニチュアを通して、わたしたちには見えない社会のあり方を見せてくださいます。著書『時が止まった部屋 遺品整理人がミニチュアで伝える孤独死のはなし』(原書房、2019年)に掲載されている作品のなかで、壁に大きく養生テープで「ゴメン」と書かれた部屋の写真には、本当にどきっとしました。小島さんが訪れた自殺の現場は若い世代の方の部屋が多かったそうですが、それは今でも変わらない傾向でしょうか。
小島 変わらないですね。わたしが経験した特殊清掃の現場で、自殺で亡くなった方は1割くらいだと思います。孤独死(誰にも看取られずに自宅で亡くなり、死後、発見されるまでに日数が経過した状況)した人の「死因の構成で特筆すべきことは、自殺の占有率も高く、孤独死者の死因の11%を占めることである」という報告(*1)もあります。
わたしの実感では特に若い世代が多く、ここ最近は30代の方が多かったです。実はこのミニチュアは、テレビ局からの依頼で作ったものでした。番組の内容は、自殺未遂の経験があり、周りの人に発見されて一命をとりとめた若い人たちの座談会。わたしのミニチュアは現場の例として紹介されました。実際にわたしが訪れて、強く印象に残った部屋を再現しています。間取りなどはまったく同じというわけではなく、実際には養生テープではなくガムテープで、壁一面に「ゴメン」と書かれていました。
*1 「第4回孤独死現状レポート」(一般社団法人日本少額短期保険協会孤独死対策委員会、2019年5月)より