開幕して約1か月――。史上初の無観客試合から有観客へと環境が変わっていくなかで、各球団のマネジメント力が試された1か月でもありました。
われわれ落語家の世界では、7月1日から大阪の寄席である天満天神繁昌亭が入場者数限定で再開しました。
「演者が少しでもやりやすいように、空いている座席に写真を貼ろう!」
という事になったそうなんですが、行ってみると、最前列のど真ん中に桂ざこば師匠の写真が貼ってありました。
めちゃめちゃやりにくいっちゅうねん!!
勿論ざこば師匠が悪いわけではないんですが、「怖い」「とにかく怖い」「笑っているのが余計怖い」「目が合った瞬間ネタが飛んだ」という意見がとくに若手から噴出したようで、数日でざこば師匠のお写真は撤去されました。
今は《使用不可席活用キャンペーン》という、1か月2000円でその席にお客様自身の写真を貼ることができるという制度になっているそうです。
このように、どの業界もコロナ禍の中で何がベストなのか試行錯誤しているので、多少の失敗、いわゆる【バグ】は仕方がない。そう思わせてくれたのは、この1か月間スワローズを取り巻いた人間達の【バグ】でした。
今回は我らがスワローズに降りかかった3つの【バグ】を紹介したいと思います。
スワローズファン困惑……珍実況、迷采配、謎用語
(1)フジテレビ上中アナの【実況バグ】
7月4日、神宮で行われたベイスターズ戦でのフジテレビの上中勇樹アナウンサーの実況。
「二塁に送って一塁へ送球! ダブルアウト!!」
「国吉の防御率、4割9分1厘です」
「ファーストの村上が自らマウンドを踏んでアウトを取りました」
「三塁ベースでは口を隠しながら話し合いが行なわれています。密になっているからでしょうか」
たしかにこれらはプロにあるまじき最低の実況です。しかし、大きく深呼吸してからもう一度読んでみてください。
これらの【バグ】ちょっと面白いと思ってしまいませんか?
上中アナには(大変申し訳ないのですが)とくに野球の学習をせず、現状のままでいいので、副音声でぜひもう一度実況をやっていただきたい。「ダブルアウト」に続くアッと驚く新語が誕生するかもしれませんし、もう一度何らかの形でチャンスを与えてあげてほしいんです。
この試合の解説だったスワローズOBの名捕手、大矢明彦氏が暴走する上中アナを必死でリードしてくれた甲斐もあり、試合は10-8でスワローズの勝利。
(2)ドラゴンズ・与田監督の【三ツ間バグ】
7月7日、ナゴヤドームでのドラゴンズ戦。
2-1とスワローズ1点リードで迎えた10回裏、2死一、三塁のピンチで7番・京田陽太を敬遠。8番・投手の岡田俊哉に打席が回ったがベンチに野手が残っておらず、代打に同じ投手の三ツ間卓也を出すが空振り三振でゲームセット。
これはこの1か月で最大の【バグ】ではなかったでしょうか。与田監督の肩幅があんなに狭く見えたのは初めてでしたもん。
実はスワローズも2018年5月6日のカープ戦での『代打・風張』や2019年5月8日のタイガース戦での『代走・風張』といった(風張投手ばっかりやがな!)経験があり、この2試合はサヨナラ勝ちと引き分けに終わっていたことで笑い事で済んでいますが、もし負けていれば首脳陣が戦犯扱いにされていたでしょう。
ただ、これらは総力戦プラスDH制がないがゆえに起こった【バグ】であり、「ひょっとするとやってくれるかもしれない」という淡い期待感と高揚感を与えてくれたのも事実。
スーパーマリオブラザーズの「1-1」で最初に出てくるクリボーを踏もうとしてジャンプするもタイミングをミスって踏めずに死ぬ。プレイした事がある皆さん、一度は経験したでしょう。
あれです。
「ウソやん……」ってなった、あれです。
今回はスワローズ・石山泰稚がマリオ、ドラゴンズ・三ツ間投手がクリボーでしたが、逆の立場になった時には、
「なんでハンマーブロス出さへんねん!」
と言いたい気持ちをグッと堪えてクリボーを全力で応援する心構えが必要だと思いました。
試合は2-1でスワローズの勝利。