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京都“安楽死”事件「2年前、私がそのALS女性から受け取ったSOSのメッセージ」

2人の医師は、別の選択肢について女性とともに考えたか

2020/07/24

genre : ニュース, 社会

 京都在住の女性(当時51歳)が安楽死を望み、SNSを通じて依頼した医師2人の手によって昨年11月に死を遂げたことが事件化した。実は、2018年4月、私はその女性からツイッターのアカウント宛に、メッセージをもらっていた。

<ALS患者です。発症して7年になります。体は動きません。食べることも話すこともできないけど、人工呼吸器は着けていません。視線入力のPCで書いてます。ディグニタスでの安楽死を受けたいと考えていますが、付添い人が必要です。付添い人が自殺幇助罪に問われるか?という問題にぶち当たっています。どうすればそれを判明できるか、何か助言を頂けますか?裁判を起こすしかないのでしょうか?>

※写真はイメージです ©iStock.com

なぜ私は彼女に返信しなかったか

 私は、その半年前に世界6カ国の安楽死事情をルポした『安楽死を遂げるまで』を出版していた。文中にもあったスイスの自殺幇助団体「ディグニタス」をはじめとする外国の関連団体を取材するなかで、彼女のような神経難病患者が、スイスに渡って安楽死を実現したケースも紹介していた。この女性は、同じような最期を迎えたいと思ったのかもしれない。

 今も、安楽死を望む人々から、頻繁にメッセージが届く。そこからは、さまざまな苦悩が読み取れるが、ほぼ全員が共通して望むのは「苦しまずに死ぬ」ことだ。そのための方法を知ろうとしている。なにも安楽死を望まずとも、緩和ケアによってかなりの部分で、「痛み」を解消できるのだが、日本ではそのあたりの情報が整理されていないのだろう。

 私はこうした問い合わせに対して一切、返信をしないと決めている。この女性に対してもそうだった。

 せっかくなので、この場を借りて明らかにしたいと思う。私が返信を控える理由は、何も関心がないからでも、自分勝手な行動を取っているからでもない。それは、今回のような事件が起きる可能性を常に孕んでいることはもちろん、一人の人生の航路が私の助言によってわずかでも変化してしまうことほど恐ろしいことはないからだ(その後、スイスで自殺幇助を遂げた日本人女性に同行取材し、『安楽死を遂げた日本人』という本にまとめたが、それは自らの力で自殺幇助団体に登録し、海を渡った稀有なケースだった。しかし、彼女に同行してよかったのかどうかは、今も自問自答している)。

 今回の報道で、問い合わせをしてきた女性が安楽死を遂げたと聞いて、驚きを隠せなかった。おそらくツイッターを通じて私に連絡をとったように、逮捕された医師らにもSOSを発したのだろう。

スイスでは「自殺幇助」が認められているが……

 日本と世界の安楽死をめぐる状況を整理したい。

 大前提として、日本では安楽死は、法的に認められていない。