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プレーににじみ出る反骨……梅野隆太郎、2020年開眼の理由

文春野球コラム ペナントレース2020

2020/08/07

数多く耳にする「地道」や「積み重ね」という言葉

 入団時から取材してきて、数多く耳にするのがこの「地道」や「積み重ね」という言葉。大卒1年目から1軍に定着し、2軍での下積みもほとんど経験していない快調な“歩み”には似つかわしくないフレーズでも、捕手としてのプレースタイルを目にすればピッタリ重なる。

「盗塁を刺したりは当たり前ですけど、ワンバウンドを止めたり、後ろに逸らさないとか1球、1球の積み重ねをずっと大事にしてきた。それがピッチャーを助けることにつながるんで」

 内心は燃え上がっていても、グラウンドでは愚直にミットを構える。そうやって土にまみれ、激痛にも耐えながら、信頼を勝ち取ってきた。

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 7月31日のDeNA戦。4回、上茶谷大河のカットボールを捉えて逆方向の右中間最深部へ先制3ランを叩き込むと、8回には10球粘った末にライト前へ運びチャンスを拡大し、この日も存在感は際だった。それでも、快音よりも印象的だったのは青柳晃洋、馬場皐輔、ジョー・ガンケル、ロベルト・スアレス、藤川球児とつないだ継投の中で、ワンバウンドして不規則に跳ね上がるボールを文字通り壁となって何度も止める姿。試合後も「自分の中でどんな状況でもピッチャーを助けるというか。当たり前に見えるかもしれないけど、自分では必死にしてるつもり」と胸を張った。6月28日からは先発マスクを他の選手に一度も譲らず。地道にコツコツと結果を積み重ね、まさしく自力でポジションを奪い返した。

 今、甲子園で背番号44が打席に入ると右翼スタンドを中心に“梅の花”が咲き乱れる。メガホンを叩き、声を張っての応援が禁止されているため、両手を広げて掲げられる応援タオルの数々。凡打でも全力疾走を欠かさず、際どいタイミングなら臆することなく一塁へ頭から突っ込んでいく。厳しい立場に置かれても、下を向くことなく目の前の「一瞬」にすべてを注ぐ。本当に泥にまみれながら、チャンスをつかんできた。結果以上に見る者のハートに訴えかけるものが2020年の梅野にはある。

©スポーツニッポン

チャリコ遠藤(スポーツニッポン)

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