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祖先が“伝説の格闘家”だった講談師と「2000年の桜庭和志」著者が語り合った「柔術というドラマ」

神田伯山×柳澤健 異種格闘対談#1

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「なぜ、私は普通の人生を歩んでしまったのか(笑)」(伯山)

柳澤 相撲だけじゃなく、ボクシングやキックボクシングも同じです。ボクシングやキックボクシングでダウンすれば、レフェリーが間に入って分けてくれる。立ち上がり際に攻撃されることはあり得ない。でも、総合格闘技は何をやってもいい。「寝た状態からどうやって安全に立ち上がるか」を考えておかないといけないのは総合格闘技の選手だけです。

伯山 そうか、実際にやってみないと分からない事は多くあるんでしょうね。なぜ、私は柔術をやっておかなかったのか。スラムダンクの流れからバスケットを普通にやる、普通の人生を歩んでしまったのか(笑)。

 

柳澤 グレイシーアカデミーに入会すると、初日に安全な立ち上がり方を教えてくれます。「君が座っているところに向こうからヤバいやつがやってくるとする。そいつは、立ち上がり際に蹴ってくるかもしれない。そんな時、君はどうやって立つか?」という風に。

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伯山 実戦を教えるんですね、グレイシー柔術は。

柳澤 (実演しながら)こうやって、足と片手の三本で体重を支えながら、残りの腕で顔面をディフェンスしながら立ち上がって逃げろ、と教えられるわけです。腕を蹴られて痛いかもしれないけど、顔面を蹴られるよりはいいだろう、と。

伯山 そういう柔術を柳澤さんは実際に体験して学んでいると。

柳澤 はい。あと柔術に関していえば、幕末に創始された「不遷流柔術」というのがあって。明治期には田邊又右衛門という寝技の名人がいたんですよ。

伯山 明治に、ほお。

柳澤 その寝技の名人が、「実力で俺とやってみろ」と講道館の猛者たちに挑戦して、次々にやっつけてしまう。講談らしい話でもあるんです。

伯山 おお、まさに。

柳澤 僕はプロレスについては重要なところは書いたので、もう書く気がないんですけど、この田辺又右衛門に関してはぜひ書きたいと思っています。

伯山 それは、ぜひ読んでみたいですね。

司会:九龍ジョー 写真:今井知佑 構成:文春オンライン

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※神田伯山さんの公式YouTubeチャンネル「神田伯山ティービィー」にて、柳澤健さんとの対談動画を公開中

祖先が“伝説の格闘家”だった講談師と「2000年の桜庭和志」著者が語り合った「柔術というドラマ」

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