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又吉直樹が語る“最初の相方”「もうお前に飽きた、と言われた日」

“テレビっ子”又吉直樹が語る「テレビのこと」#1

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「俺にはお笑いがある。ほんとは面白いやつなのに、みんな気づいていない」

――舞台は観に行ってましたか。

又吉 NGK(なんばグランド花月)とか、うめだ花月に、当時は漫才が好きやったんで、ティーアップさんが出る時に、中学校の時とか観に行ってました。あと、2丁目劇場のテレビ中継を、深夜とか日曜のお昼とかに観てましたね。千原兄弟さんとか、ジャリズムさんとか、中川家さんとかのコントも好きでした。それで、中学に入った頃にはもう、お笑いがやりたいと思うようになっていたんです。

 

――芸人になろうと思った一方で、中高時代はサッカーにも打ち込んでいますよね。特に高校はサッカーの名門校である北陽高校に進んでいます。お笑いよりもサッカーという感じじゃなかったんですか?

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又吉 サッカーの才能がないっていうのは、最初からわかってたんですよ。小3で、みんなと「よーいドン」でやり始めたんですけど、自分だけ異常に下手で、俺全然できひんなって。だから、サッカーは「好き」ということだけでやっていて、ほんまのことを言うと、中学まででいいと思ってたくらいなんです。

――そうだったんですか。

又吉 ええ。6年生ぐらいから本気で努力し始めて、中学ぐらいでたぶん伸びたと思うんですけど、高校に行ってできるレベルじゃないなと自分でも思ってました。それよりはお笑いがやりたくて仕方なかった。「あれっ? 周りより俺の方ができるかも」って思えた唯一のものがお笑いだったんです。お笑いだけは、学校レベルでは先を越されたという感覚がなかった。お笑いだけは自分の味方やと。でも、中学に入って、思春期のもう一段階上に入ってしまって、女の子と喋られへんみたいになっちゃうんです。それでクラスでずっと黙ってる存在で「気持ち悪い」とか言われるんですけど、心の中では「俺にはお笑いがある。ほんとは面白いやつなのに、みんな気づいていない」って沸々と思いながら過ごしてました。

 

最初の相方・原偉大と過ごした日々

――そんな自信があった又吉さんに対して「お前に飽きた」っていう一言を放ったのが、中学の同級生で最初の相方になる原偉大さんだったそうですね。

又吉 あれはかなりショックでしたね(笑)。原は、友達の友達やったんですよ。今もグレープカンパニーで芸人やってる難波(麻人)が中1で同じクラスで、お笑いの話とかする友達だったんです。その難波の友達が原で、原は僕にハマってくれたんですよ。いつも「おもろいなー」みたいに言ってくれてたんですけど、ある日、急に「飽きた」って。

――ええー。

又吉 「いつも一緒やん」「アホなフリして、そのパターンや」「天然のフリしてるだけやん」みたいな。

――厳しい(笑)。

又吉 嘘やろ? って思いましたよ(笑)。僕がよくやってたのは寛平師匠のイメージだったんですけど、原にそう指摘されて、そこから毎日どうやったら原を笑わすことができるかを、がむしゃらに考えてましたね。

――原さんが笑わせる目標になったわけですね。

又吉 僕はみんなの前では温厚な、ちょっとおっちょこちょいで、アホな感じのキャラだったんですけど、原の前でだけはスタイルを変えて臨んでました。色んなことを試して、原が笑ったら「あぁよかった」みたいな。原を前に緊張してた日々というのは、僕にとってはけっこう大事な時間やったのかもしれないですね。

 

(#2に続く)

写真=榎本麻美/文藝春秋

またよし・なおき/1980年大阪府寝屋川市生まれ。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属のお笑い芸人。2015年「火花」で第153回芥川龍之介賞を受賞。著書に、『第2図書係補佐』『東京百景』『夜を乗り越える』『劇場』などがある。

INFORMATION

「さよなら、絶景雑技団」
【会場】よみうりホール(東京都千代田区有楽町1−11−1 読売会館)
【日時】2017年9月9日(土)開演 18:30、9月10日(日)開演 18:00
【出演】ピース・又吉直樹、グランジ・五明拓弥、しずる、ライス、サルゴリラ、囲碁将棋・根建太一、ゆったり感・中村英将、井下好井・好井まさお、パンサー・向井慧、スパイク・小川暖奈
【料金】前売6,000円/当日6,500円(税込・全席指定)

「『やぁ』、朗読会」
【会場】よみうりホール(東京都千代田区有楽町1−11−1 読売会館)  
【日時】2017年9月10日(日)開演 13:30
【出演】ピース・又吉直樹、グランジ・五明拓弥、しずる・村上純
【料金】前売3,000円/当日3,500円(税込・全席指定)

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