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コロナ禍は「非常事態」ではない

 こうした疫学に徹した冷静な指摘を前にすると、日々メディアで目にする議論にどれだけの意味があるのかという気がしてくる。

 政策を決めるのは「政府」なのか? 「専門家」なのか? この点は、日本でも大きな論点となっているが、スウェーデンはどうなっているのか。

〈スウェーデンのコロナ対策は、「政治的リーダーシップによる危機対応」としてではなく、「専門機関による通常時対応」として取り組まれています〉

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〈スウェーデンでも、戦争など国家存亡に関わる非常事態には非常時対応となるわけですが、現在のコロナ禍は、そこまでの危機ではない。ですから、「是が非でも被害を最小限に抑える」というよりも、「コロナ以外の健康効果をも含めたコストとベネフィットのバランスを考慮しながら、エビデンスを吟味して、効果があると思われる対策を慎重に実行する」ことになります〉

上田ピーター氏

〈例えば、毎年スウェーデンでは、アルコール関連の死因で亡くなる人は約4500人。今回のコロナによる死者とほぼ同じです。タバコ関連の死因は約12000人。単純な比較はできませんが、コロナ対策の目標も、アルコールやタバコを法律で禁じるわけではないように、「最大多数の人の寿命を最大限に伸ばすこと」ではなく、「公衆衛生上のコストとバランスを取りながら、個人の自由や個人の充実した生活を守ること」になるわけです〉

 コロナ禍は、「非常事態」ではないので、原則として「専門家」が政策を決め、「政府」は介入しない、というのが、スウェーデンの対応だ。

 また「疫学を重視すること」は、必ずしも「経済より感染症対策を優先すること=厳しい行動規制を求めること」ではない、ということもスウェーデンの事例は教えてくれる。

 スウェーデンの対策と他国との比較を冷静に論じた上田ピーター氏の「スウェーデン『集団免疫作戦』のウソ」の全文は、「文藝春秋」8月号および「文藝春秋 電子版」に掲載されている。

出典:「文藝春秋」8月号

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文藝春秋

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スウェーデン「集団免疫作戦」のウソ