国際的な現代美術館として内外に知られる東京・六本木の森美術館。今年1月、新館長に就任した片岡真実さんは、昨年、森美術館歴代入場者数第2位を記録した「塩田千春展:魂がふるえる」を企画した人物だ。

片岡真実さん

「特に赤い糸を使った作品はSNSに良く映えて多くの方々にイメージが共有され、入場者数が大きく伸びました。これからの現代美術は『体験とストーリー』が鍵になると思っています。SNSを入口にしながらも、美術館空間で実際のスケール感や素材感を体験し、場合によっては嗅覚や聴覚なども使いながら鑑賞すること、さらには作品の背景にあるストーリーを深く学ぶことによって、鑑賞体験はより充実したものになります。SNSと実空間との相乗効果を狙いたいと考えています」

 今後開催予定の「STARS展:現代美術のスターたち――日本から世界へ」では、草間彌生、李禹煥(リ・ウファン)、宮島達男、村上隆、奈良美智、杉本博司の6人を選び、その軌跡を紹介する。

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「世界のどこでも『現代美術』を共通言語にしたコミュニティが存在します。個々のアーティストの作品背景を読み解くことで、地域を超え、現代社会が直面している様々な課題についての知識や理解を深めることができます。それは他者について学ぶことでもあります。『現代美術』は世界の縮図です。地球のこと、世界のことが、歴史、社会、政治、自然科学、文化、哲学など多様な視点から見えてきます」

 新型コロナウイルス感染症の拡大により、文化芸術の世界全体が厳しい状況にある。

「ポストコロナの世界、地球のあり方が根本的に修正を迫られているような気がします。闇雲に成長を求めるのではなく、より質の高い、成熟した社会とはどのようなものか、日常生活から一瞬距離を置き、都心の53階でそんなことを考えられるような時空を提供したいと思っています」

かたおかまみ/1965年愛知県生まれ。東京オペラシティアートギャラリー等を経て、2003年より森美術館に在籍。国際美術館会議会長。

INFORMATION

展覧会『STARS展』
※会期は公式サイトでご確認ください。
https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/stars/index.html