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 別に北の肩を持つワケではないが、化粧品やシャンプーは、わりと北朝鮮の国産品も品質が良い。金正恩党委員長が頻繁にこれらを生産する化粧品工場を現地指導するたまものかもしれない。北朝鮮の「人参クリーム」や「シャンプー」の空容器が、漂着ゴミとして日本に流れ着いたのを筆者は確認している。

北朝鮮にだってシャンプー(左)や人参クリームはある(筆者撮影)

 漂着ゴミとして日本に流れ着くということは相当、人民に普及している証左だ。すべてにおいて「南町」製品が優位というドラマの設定は、現在の北朝鮮では幻想でしかないだろう。軽工業品の生産はここ数年で急増しており、それ以前に脱北した人の証言がドラマに反映されているのかもしれない。

北朝鮮ビールは「サイズに注目」

 第5話では、大佐の妻であるマ・ヨンエ(キム・ジョンナン)はじめ村の女性たちがジョンヒョクの家に押しかけ、つまみの干しダラと缶ビールで女子会を楽しむ。

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 続いてセリとジョンヒョク、さらに韓国から北へ逃亡してきたク・スンジュン(キム・ジョンヒョン)が、開城駅から平壌駅まで列車移動する。

韓国側の警備所(下)から見える北朝鮮の村(筆者撮影)

 食堂車でくつろぐスンジュンは、瓶ビールをありったけ注文する。ともに銘柄は平壌に工場のある「大同江(テドンガン)ビール」だ。中国に輸出するほどの品質で、女子会のシーンでは缶(350ミリリットル)、列車の中のスンジュンは小瓶の大同江ビールを飲んでいる。

 だが実際は、大同江ビールは大瓶が基本とされる。小瓶は輸出用に回されているのだ。近年発売された缶ビールも普及しつつあるが、やはり大きな500ミリリットルが一般的で、350ミリリットルの缶ビールはあまり市場に出回っていない。理由は単純で、北朝鮮は酒が強い人が多く、しかもビールは現地で水と同じようにガブガブ飲まれるため、小さいサイズは需要が低いのだ。また、缶は使い捨てのため製造コストがかかる。北朝鮮ではリサイクルできる瓶の方が、メーカー、消費者ともにメリットが大きい。

大同江ビールの缶タイプは500ミリリットルが多い(筆者撮影)

 ちなみに筆者は今年6月、大同江の「生ビール」ペットボトル(1・25リットル)の漂着を確認している。ビールは大容量で「生」重視の時代に移行しつつある。

日本に漂着した大同江生ビールの空容器(筆者撮影)

炭酸ジュースは「情報が古い」

 さて、列車の車内販売でセリは炭酸ジュース、ジョンヒョクはミネラルウォーターを注文する。炭酸ジュースは、北朝鮮に現存するソンフン食料工場の「桃の香り炭酸ジュース」のデザインを少しだけ加工した商品が使われている。

6年前に日本に漂着した「桃の香り炭酸ジュース」(筆者撮影)

 第4話のスンジュンがキジを狩るシーン、第8話のダンの母親コ・ミョンウン(チャン・ヘジン)が第5中隊をもてなすシーンにも、同じ「桃の香り炭酸ジュース」が出現する。どうも「愛の不時着」の小道具さんが、ソフトドリンクを1種類しか作らなかったようだが、北朝鮮には数え切れないほどの種類のソフトドリンクが存在している。