韓流ドラマ「愛の不時着」の人気が止まらない。中でも、主人公である韓国の財閥令嬢・セリ(ソン・イェジン)がパラグライダーで不時着することになるドラマの舞台、北朝鮮の描写は魅力の一つだ。
ドラマで描かれる北朝鮮の生活はどこまでリアルなのか、これまで2つの記事で紹介してきた(#1〈韓流ドラマ「愛の不時着」の北朝鮮生活はどこまでリアル?《韓国随一の北専門記者が解説》〉、#2〈本当に平壌はあんなに頻繁に停電するの? 「愛の不時着」8つの疑問に在韓記者が答える〉)。
その続編として、北朝鮮のファッションやコスメ、恋愛事情について語ってくれたのは、ソウルの名門・梨花女子大学に在学している北朝鮮出身のキム・イェリさん(29歳、仮名)。
キムさんは、中国国境に隣接した咸鏡北道の出身。高等中学校(高校に相当)を卒業した後、地元で事務員として勤務。2014年に祖国を離れた。「愛の不時着」を観た脱北者の彼女が、北朝鮮女性の日常生活についての8つの疑問に答えてくれた。(*以下の記事では、ドラマの内容が述べられていますのでご注意ください)
◆ ◆ ◆
Q1:リ・ジョンヒョクは、北朝鮮で女性にモテるタイプか?
不時着したセリを勤務中に発見した北朝鮮軍将校のジョンヒョク(ヒョンビン)は、婚約者がいながら田舎の社宅村で近隣の主婦から愛されるなど、当然ながらモテてる。実際に北朝鮮では、どんなタイプの男性が人気なのか。
「ジョンヒョクのように出身成分(階層)の良いイケメンの軍人さんがいれば私も一目惚れするでしょうが、現実にはヒョンビンのようなイケメンは北朝鮮にはいません(笑)。
実は、軍人という職業はお金儲けができないため人気がありません。北朝鮮の月給は、一般的には2000~5000北朝鮮ウォン(1ドル=約8000北朝鮮ウォン)くらいですが、実際の生活費は月10万~15万北朝鮮ウォンかかります。そのため、月給以外に副収入がなければ生きていけません。ジョンヒョクのような高位層の子どもは、両親が生活費を補助しているでしょうが、ほとんどの国民は生活費を補助するため、副業としてアルバイトをしています」(キムさん、以下同)
そんな状況から、北朝鮮の女性たちが“夫候補”を探すとき、一番重要な基準は「経済力」だという。
「最も好まれる職業は、貿易の仕事に就いている人。外貨が稼げる上に、外国製品も簡単に手に入れられるため、多くの副収入が上げられるからです。ほかには、バイクや自動車を修理できるエンジニアも人気が高いです。北朝鮮の富裕層は、海外から中古の自動車やバイクを購入して使っていますが、10年以上前に製造された中古品が多い。そのため頻繁に壊れるので、自動車やバイクを修理できるエンジニアは、稼ぎの良い人気職業なんです」