文春オンライン
《ジョンヒョクの所属先》「南北境界線を監視するホンモノの北朝鮮軍」を訪問した日本人は「愛の不時着」をどう見たか?

《ジョンヒョクの所属先》「南北境界線を監視するホンモノの北朝鮮軍」を訪問した日本人は「愛の不時着」をどう見たか?

2020/08/02
note

南北国境はホントに徒歩で行き来できるのか

 南北4キロのDMZは朝鮮戦争以来、70年もの間、手つかずの自然が広がっている。筆者は韓国側から立ち入りが可能な軍事境界線を望む展望台のほとんどを制覇したが、Aさんの証言通り、DMZは多くが雑木林か草原になっている。

「愛の不時着」第1話でリ・ジョンヒョクが地雷を踏んでしまうシーンで分かるように、朝鮮戦争時代から南北が無数の地雷を敷設している。素人が国境を渡ろうと正面突破するのは、まず無理だろう。

韓国側にある地雷の看板(筆者撮影)

 一方で、前線の北朝鮮兵士の脱北は年に数人単位で報道されている。2015年8月には韓国側の防衛線に北朝鮮が敷設した地雷によって、韓国兵2人が重傷を負う事件が発生した。DMZの地雷原を避けるルートを、北側の前線兵士は知っているようだ。

ADVERTISEMENT

 第9話でユン・セリ(ソン・イェジン)が、リ・ジョンヒョクの誘導で、地雷を除去した小道を歩いて南側に脱出するシーンがあるが、最前線の兵士であれば、南側に抜けるルートを知っている可能性はあり得る。

リ・ジョンヒョク(ヒョンビン)(tvNホームページより)
ドラマと同じ迷彩服を着る北朝鮮の兵士(筆者撮影)

国境を越える「秘密トンネル」は本当にある

 ドラマの後半戦では、ジョンヒョクの敵役、保衛部少佐のチョ・チョルガン(オ・マンソク)が地下の旧坑道を通って脱北。セリの命を狙うチョルガンを追ってジョンヒョクも同じ坑道を這うようにして南側に抜け、ソウルにたどり着く。

 北朝鮮が組織的に掘削し、軍事境界線を貫くトンネルは「南侵トンネル」と呼ばれ、韓国内では1974~1990年の間に計4カ所が見つかっている。板門店の近くで78年に見つかった第3トンネルは地下73メートル、幅と高さ2メートル、長さ約1・6キロ。第4トンネルは東部の楊口(ヤング)で90年に見つかり、地下145メートル、高さと幅は第3トンネルと同じだが、長さは2キロ、軍事境界線から1・5キロも南側に越境しており、韓国軍を驚かせた。

北に繋がる第2トンネル入り口。現在は観光地になっている(筆者撮影)
第2トンネル内部(筆者撮影)
第2トンネル内部(筆者撮影)

「南侵トンネルは20カ所近くある」といった脱北者の証言が韓国国防部に寄せられているというが、韓国軍による掘削調査では第4トンネル以降はいまだ発見されていない。偵察衛星が全盛の今となっては、トンネルや坑道を使った出入りは考えにくい。