しかし、宿泊の場合、お金がかかるので、廃村にテントで野宿することに決め、早速その廃村についての歴史、建物の所有者などを探す作業に入りました。
役所や関係者の方々をあたり、建物の所有者である、不動産屋さんが見つかりました。撮影も建物への立ち入りも自由にして下さいと許可をいただきました。ただ、その時に「自由に見てもらっても良いけれど、何があっても自己責任でお願いします」
そう言われたのです。でも、この時は特に気にも留めませんでした。
突然村に戻ってきた行方不明の男性
その後、昔、村に住んでいたというお年寄りをみつけたので、老人ホームに電話をし、本人から直接話を聞きに行きました。
そのお年寄りが話すには、この村が廃村に至るまでの背景には、ある事件が切っ掛けになったと言っていました。その事件は、今から何十年も前の出来事で、ある村人が行方不明になったことから始まったそうです。
当時、村に住んでいたある男性が、突然行方が分からなくなり、そのまま数年が過ぎたそうです。
しかし、数年後、行方不明の男性が突然村に帰ってきたのだそうです。帰って来たその男性は、行方不明の間の記憶が全くなく、自分がどのようにその期間を過ごし、どこにいたのかも分からないということを話したといいます。そして、その男性は、村に帰って来てから少し様子がおかしくなっていたようです。夜に突然大声で何かを怒鳴り出したり、見たこともない奇妙な字を書き出したりしていたそうです。
その後、その男性の家族も様子がおかしくなり、最後には家に火を付けて一家全員が亡くなったそうです。
あの世から帰ってきたのではないか
それからまた数年が過ぎた頃、ある家の玄関の扉に、小さなマジックペンで書いたような落書きが見つかりました。
その落書きは「む」という文字を変化させた様な字で、誰が書いたのかと皆で不思議がったそうですが、その文字は、あの行方不明だった男性がよく書いていた文字に似ているという話が出たそうです。
その後すぐに、その家のご家族が突然亡くなりました。そして、この不思議な文字は、毎年のようにどこかの家の玄関に書かれていて、書かれた家では不幸があったというのです。
「もしかしたらあの世からあの男が帰ってきたのではないか」そんな話も出て来たそうですが、それ以来、この村ではその文字が玄関先に書かれると、その家の家族の誰かが亡くなるという噂が囁かれるようになったといいます。