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日本で1990円のポロシャツ、中国からの仕入れ値は350円

 ユニクロは製品を仕入れて販売するだけではなく、SPA(製造小売り)に大転換して成功の端緒をひらいた。1990年代後半にアメリカのGAP、スペインのZARAなどの方式を採りいれるのがはやかったのだ。

「作った商品をいかに売るかではなく、売れる商品をいかに早く特定し、作るかの作業に焦点を合わせる」(前著文庫版58ページ)商法である。

 企画、生産から販売までを串刺しして、ユニクロはすべてを管理。下請に生産させた商品は、自社で100パーセント引き取る。そのため、著者は前著の中国に続いて、この本の執筆のために、香港のユニクロ下請け、カンボジアの下請け工場の取材にでかけることになる。

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「製造原価と販売価格の差額が、ユニクロの利益の源泉である。製造原価の大半を占めるのが人件費なのだから、人件費が安いところで作れば、利幅が大きくなる」

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 そのひとつの例として、横田さんが中国取材で着ていた焦げ茶色のポロシャツは、日本で買ったときは1990円だった。しかし、そのポロシャツは、中国から仕入れたときは350円だった、と前著に書いている。国際アパレル企業が、中国から東南アジアへ、最近ではカンボジアからバングラデシュまで移動したのは、より安い賃金をもとめてのことである。

単価重視、利益第一主義、経済の外部化...日本企業の脆さ

 1960年代から日本企業は、韓国、シンガポールへ、さらにフィリピン、インドネシア、台湾、中国、ベトナム、カンボジア、バングラデシュへと進出した。公害企業の転進もあった。労働運動を回避する狙いもあったであろう。わたしもそれぞれの国へ日本企業を追いかけていった。たとえば、メキシコの自動車部品工場で、日本人経営者は「これからは賃金の安いべトナムへ移ります」といっていた。資本に国境はない。が、それを見直させたのが、新型コロナウイルスである。

 新型コロナウイルス厄災が世界に拡がるなかで、「ジャスト・イン・タイム」の生産管理方式を前提にした、サプライ・チェーンが機能しなくなった。たとえば単価が低く、利益率も低いマスクは、人間の健康と生命の安全に必要であっても日本ではほとんど生産されていなかった。単価重視、利益第一主義、経済の外部化の脆さが明らかになった。

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