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川口市不登校訴訟 教師の体罰を認めて処分していた市教委が、なぜか前言を翻した

元生徒側は「裁判に誠実に向き合っているとは感じられません」

2020/08/06

 埼玉県川口市の市立中学校で元生徒・加藤健太さん(仮名・17)が在学中に不登校になったのは、同級生からのいじめや部活動顧問からの体罰をめぐる学校や市教委の対応が不適切だったためとして、損害賠償を求めている裁判の口頭弁論がさいたま地裁(岡部純子裁判長)で7月29日に開かれた。

 市側は、顧問教諭の体罰を否定する主張をした。市教委はこれまでに顧問教諭の体罰を認めて、訓告処分にしている。加藤さんの弁護士は「市側は、裁判に誠実に向き合っているとは感じられません」と話している。

さいたま地裁 ©渋井哲也

 この日の主なやりとりは口頭弁論後に開かれた進行協議(非公開)で行われた。加藤さん側が会見で明かした内容によると、市側は、顧問教諭による体罰を否定したという。準備書面にもあるように、「身体的接触による励まし」と説明。その上で、「(加藤さんは)喜んで登校を継続していた」とも主張した。つまりは、市側の主張では、コミュニケーションであり、加藤さんも喜んでいたというもので、苦痛を味あわせていないために、体罰ではないという。

 しかし、会見に出席した加藤さんの母親は、「(体罰の後に)笑っていたのは理由があります。“体罰を避けると、何発もやられてしまう。嫌でもニコニコするしかない”と息子は言っていました」と、体罰を受けたときの加藤さんの心情を明らかにした。

体罰は認められ訓告処分となっていた

 サッカー部の顧問教諭はこれまでに提出している陳述書で、こう述べている。

「加藤さんの頭や肩をコンコンと軽く叩いたり、頭を撫でたり、耳を指で挟んで軽く引っ張ることをもしました。私としては、息子のように加藤さんとのコミュニケーションとして加藤さんに触れていたのであり、(家庭学習ノートに)記載が少ないことに対する罰として叩いたり、引っ張ったのではありません」

「本件母もノートに書かれた加藤さんと私のコメントを点検していたと思いますし、本件母が、加藤さんから学校での出来事を聞いていたはずなので、私はコンコンと頭や肩を叩いたり、耳を引っ張ったことを知らなかったということはないはずです」

 しかし、顧問教諭が体罰をしたことについて、市教委が、2017年2月24日付で埼玉県教委にも報告している。その後、同年3月21日付で、訓告処分にした。

体罰に関する処分文書 ©渋井哲也