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川口市不登校訴訟 教師の体罰を認めて処分していた市教委が、なぜか前言を翻した

元生徒側は「裁判に誠実に向き合っているとは感じられません」

2020/08/06

「顧問教諭の認識の甘さと加藤さんの心情に対する配慮の欠如」

 市教委が県教委にあてた報告は、顧問教諭による2回の体罰を認定している。1回目は2016年7月15日、2回目は同年9月5日。いずれも、家庭学習ノートに空白部分が多く不十分であったため、顧問教諭が右手こぶしの指側で加藤さんの頭頂部やや左側を叩いた。さらに、左手の親指と人差し指で加藤さんの右の耳をつまんでひっぱった。体罰に至る「主たる原因」としては、「コミュニケーションの範囲内であるという顧問教諭の認識の甘さと加藤さんの心情に対する配慮の欠如」としている。

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 さらに「所見」として、「頭をたたく行為や耳を引っ張る行為は体罰であるとの疑念や非難を受けても容易に否定できるものではない。よって、市教委としては、顧問教諭と学校長に対し厳重に注意するとともに、引き続き関係機関との連携を図り、加藤さんに対しての支援を行なっていくよう指導していく」などと書かれている。

 つまりは、市教委は、顧問教諭による加藤さんへの体罰を認定し、背景となった顧問教諭の甘さを指摘していた。裁判での市側の主張と矛盾する。

「市教委が作成した訓告処分の文書があるのに否定するのか」

 加藤さん側の石川賢治弁護士は「体罰の件はすでに新聞報道もされています。しかし、市側は、誤報との指摘もしませんでした。それに、市の文書としても残っています。市側の主張のミスなのか、体罰を否認するのかを聞きましたが、市側は“ミスではなく、体罰を否認する”と説明しました。ゲンコツは軽くされたのではありません。タンコブができるほどの程度でした。市教委が作成した訓告処分の文書があるのに、ここを否定するのかと思いました」と述べた。

会見する元生徒・加藤健太さん側の弁護士(左)と母親(右)  ©渋井哲也

 裁判所もこの点を市側に改めて質問したという。市教委は「行為態様としては、ゲンコツで叩いた程度であり、手拳ではない。殴打でもない。したがって、体罰ではない」と説明したという。

 学校教育法11条によれば、「校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、文部科学大臣の定めるところにより、児童、生徒及び学生に懲戒を加えることができる。ただし、体罰を加えることはできない」としている。もちろん、有形力を行使したからといって、教員等が防衛のために行った場合は、体罰に該当しないとの通知や判例は出ている。しかし、加藤さんは顧問教諭に対して暴力を振るっていない。