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「King Gnuに影響を受けました」平成生まれ初の芥川賞作家・遠野遥が見せた素顔

「何年か前にリーダーの常田大希さんが…」

 7月15日、第163回芥川龍之介賞の受賞作が発表され、遠野遥氏(28)が平成生まれで初の受賞となった。

 遠野氏は2019年に『改良』で第56回文藝賞を受賞し、デビューしたばかり。2作目の『破局』がいきなり芥川賞候補作となり、見事受賞した形だ。

遠野遥氏

「文藝春秋」9月号では遠野氏にインタビュー。その知られざる素顔に迫った。

ルールやマナーに固執する主人公

 受賞作である『破局』の主人公・陽介は大学4年生。公務員試験の勉強や筋トレに励みつつ、母校の高校ラグビー部でコーチとして後輩指導もおこなっている。社会的規範やマナーに厳しいが、それが周囲との歪みを引き起こしていく――。

 ルールやマナーに固執する陽介について、読者からは「怖い」「気持ち悪い」といった感想も。陽介の通う大学は遠野氏の卒業校である慶應義塾大学を思わせる部分もあるが、陽介は遠野氏をモデルとした人物なのだろうか。

 遠野氏は「陽介と自分は結構似ているところがある気もします」と言い、次のように続けた。

「私に限らず、この主人公にどこか重なる部分を持つ人はいるんじゃないかと思います。小説にも出てきますが、朝起きて急に人の幸せを祈りたくなる時ってありますよね。陽介は結構、リアリティを持った人間のような気はしていますね」

 

「そういう人が1人でも減ればいいなと思って」

 特に、遠野氏自身が大切にするマナーは、陽介と重なる部分があるという。

「基本的に外ではイヤホンをつけています。音楽を聴いていれば、人の怒鳴り声とか咀嚼音とか、聞かなくて済むじゃないですか。

 陽介が先輩と肉を食べる場面で、隣に座ってきた男が、脚を大きく開いてチュッチュッと音を立てて肉を食うシーンを書いたんですけど、それは本当に嫌だなと思ってて。そういう人が1人でも減ればいいなと思って、小説に書きました」