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「アルジャジーラ」の報道は

 ベイルートの爆発について、日本で最もよく名が知られている中東のニュース・メディア「アルジャジーラ」は、ヒズボラに対して融和的な報道をしている。

 アルジャジーラはかつて、アルカイダの「創設者」で2001年のアメリカ同時多発テロ首謀者でもあるオサマ・ビンラディン氏の独占インタビューを放送したことでも知られる、カタール資本の反米メディアだ。

被害を受けた個人宅。ゴーン氏の自宅も被害を受けたと報じられている ©AFLO

 2017年、サウジアラビアやアラブ首長国連邦、エジプト、バーレーンなどのアラブ諸国が、カタールとの国交断絶を宣言した。理由のひとつとしてあげられたのが、カタールによるテロ組織支援である。カタールはヒズボラにも資金と武器を提供しているとされ、様々な証拠が挙げられている。

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 今回、アルジャジーラは、爆発とヒズボラを関係づける報道はしていない。

 今回の爆発に関しては、《当初から爆発の原因はベイルート港の倉庫にあった花火だ》と爆発規模を過小評価するかのような報道をした。その後も、《トランプ大統領が「爆弾のようなものによる攻撃」である可能性について述べたもののペンタゴンの見解は異なる》といった米政権の揚げ足をとるかのような、実に反米メディアらしい報道をしている。

《爆発自体は事故かもしれないがその責任はヒズボラにある》

 これに対し反ヒズボラであるサウジアラビア資本の「アルアラビーヤ」は、当初から爆発とヒズボラとの関係について憶測を含め報道した。

アルアラビーヤは《爆発現場となったベイルート港は実質的にヒズボラの管理下にあり、そこではヒズボラが組織的に「犯罪行為」を行ってきた》と報道。《大量の爆発物を保管していたのもその一環であり、爆発自体は事故かもしれないがその責任はヒズボラにある》と非難した。

 さらにアルアラビーヤは、ヒズボラの指導者ナスラッラーが2016年に行った演説を引き合いに出して、こう皮肉を込めて報じている。

被害者を追悼するレバノンの人々 ©AFLO

《ナスラッラーは演説でこう語っていた。「イスラエルのハイファにはアンモニアを貯蔵している巨大な倉庫がある。我々は2006年の戦争ではそれを攻撃するのは避けた。彼らはそのガスを1万5000トンも所有しており、これは数万人を死にいたらしめることができる」

「専門家は、それはまさに核爆弾のようなものだ、と言った。要するに、レバノンは核爆弾を所有していると言える。これは全く、誇張などではない。我々は確かに、本物の核爆弾は所有していない。しかしそれは、もしここから数発のミサイルが発射されれば、それがハイファにあるアンモニアと一緒になって、核爆弾に匹敵するインパクトを引き起こす、という意味での核爆弾なのだ。彼(専門家)は、もし数発のミサイルが80万人の住むその地域(ハイファ)に撃ち込まれれば、数万人が死亡することになると言った」

 ナスラッラーはこの演説中、上機嫌で笑顔も見せていたが、彼の描いたシナリオは彼の祖国レバノンで現実化した》