2020年6月、約5年にわたってテレビ朝日で放送された人気番組『フリースタイルダンジョン』が終了を迎えた。番組の発起人であり、日本語ラップのパイオニアであるZeebraさんに、『フリースタイルダンジョン』が遺したものと、ヒップホップシーンの現状について聞いた。(全2回の1回目/#2に続く)
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「ラップ」が何なのか、やっと『ダンジョン』で伝わった
――2015年から始まった『フリースタイルダンジョン』が6月で終わりを迎えました。オーガナイザーとして番組に携わってきたZeebraさんは、『フリースタイルダンジョン』の成果をどのように捉えていますか?
Zeebra 「ラップ」というものが何なのか、それがやっとこの番組で伝わったかなと思ってます。EAST END×YURIの『DA.YO.NE』とか、90年代半ばから2000年代初頭にかけていろんな曲がヒットしたけど、じゃあどれだけヒップホップのことを皆が理解しているかというと、すごく表層的なものだったんだよね。一般の人からみれば、「ダボダボの服を着てチェケラッチョ言ってる人」、くらいな感じだったと思う。
でも『ダンジョン』でラップの基礎的なスキルである「韻を踏む」という作業がどれだけクリエイティブなものかということを示せたおかげで、「ラップってYO YO言ってるだけじゃなかったんだ!」とわかってもらえた。バカじゃラップできないんだよ、というのが伝わったのは収穫でした(笑)。
――ビートに乗せて即興でラップを披露する“フリースタイル”を競技として分かりやすく見せることに成功した『フリースタイルダンジョン』は、フリースタイルバトルにRPG要素をプラス。超絶技巧を持つ天才ラッパーの“モンスター”にチャレンジャーが挑んでいく演出が若い層を中心に大ヒットしました。
Zeebra 放送初期は『クレイジージャーニー』(TBS)と並び称されるほどだったんです。プロレスの試合の番組はあっても技だけを教える番組がないように、最初のねらいとして、競技として面白いものを絶対に提供したいと思ってました。それでラップに興味がない子たちもまずはバトルの面白さで見てもらおうと思ったわけだけど、結果的にそれが上手くハマったんです。だからこそ7月から始まった後継番組の『フリースタイルティーチャー』では、ラップの技やヒップホップの歴史を真っ正面からやりたいなと思って、今頑張って作ってます。