「ピッチャーの負担を軽くするために『今日は捨てゲームだ』と腹を括れるのは、12球団でも原監督くらいしかおらんだろう。これは『相手に失礼』とかいう問題よりも、自分のチームを優先したということ。今は3点、5点差なら、いつでもひっくり返せるくらい球が飛ぶ時代だけど、次のピッチャーを出すのは躊躇するだろう。『俺は敗戦処理ピッチャーか』と、若い子でもピッチャーにはプライドがあるからね」
原監督が“奇策”を見せたのは、伝統の巨人・阪神戦だった。詰めかけたファンに対する姿勢としてはどう考えるのか。
「阪神のファンの中には『舐めとるんか!』という人もいるよ。だけど逆に考えてみなさいと。あなたが監督だったらどうするかと。特に、今シーズンは、コロナの影響で120試合に短縮して、スケジュールも厳しい。こんな大差がついた状況では、(野手出身の原監督より)ピッチャー出身の監督のほうが、逆にやりたいのかもわからんよ。原監督は見た目が若大将で爽やかな感じがするけども、いやいや、したたかな監督だよ。
堀内のような意見は当然あるでしょう。でも、出されるほうはどうだろう。11点差がついて出されるピッチャーは惨めじゃないの。バッターと勝負して勉強してこいと言われてもどうかな。そういう意味でも、(原監督が)野手出身であんな発想ができるのは、たいしたもんだよ」(張本氏)
打者は「上等だ、打ってやろう」と思わなきゃ
1996年のオールスターでは、パ・リーグの仰木監督がバッター松井秀喜のところで「ピッチャー・イチロー」をコール。セ・リーグの野村監督は松井を替えて代打にピッチャーの高津を送った過去がある。松井のプライドに配慮した野村監督は試合後、「名監督と言われる人が、人の痛みをわからんようでは困る」と激怒した。
今回、阪神の打者らはどんな心境だったのだろうか。張本氏が続ける。
「打者は『そうか、上等だ。打ってやろうじゃないか』という気持ちにならなきゃ。馬鹿にされたという考えはもたないと思うよ。野手は自分の打率を上げたい、ホームランを打ちたいと思ってるから、相手がだれであろうとそういう考えはない。
私が現役のときは、漫画『あぶさん』のモデルにもなった近鉄の永淵洋三という選手がいた。代打で出てきて、そのままライトを守り、私が左バッターだからその時だけワンポイントで投げて、ライトに戻るんだから。三刀流ですよ。近鉄を率いていた三原(脩)監督はすごいことをやるなと。そういう点では、原と三原監督はダブルわな」