文春オンライン

若い衆を撃ち殺し、自分の頭を撃ち抜いて死んだヤクザが残した最後の一言

「潜入ルポ ヤクザの修羅場」#27

2020/08/23

暴力団排除“条例”の存在

 判決は以下のようになっている。

「憲法第二十五条の規定の趣旨にこたえて具体的にどのような立法措置を講ずるかの選択決定は、立法府の広い裁量に委ねられており、それが著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用と見ざるを得ないような場合を除き、裁判所が審理判断するのに適しない事柄であると言わなければならない」

 取りようによってはかなり乱暴な判例であるが、暴力団排除条例が、あくまで条例として各地で制定されている理由がわかる。

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 こうした社会情勢の中、組員の数は、おそらく激減しているだろう。

 最近、山口組の有力組織が、組員の実数を確認してみたところ、名簿上は150人弱いるはずの組員が、100名を切っていたという。普段は居酒屋のマスターをしていたり、タクシーの運転手をしながらヤクザの構成員となっている兼業暴力団は年々増えている。大きな義理事で、不足している組員を補うため、不良少年たちがアルバイトとなるケースも多い。暴力団の実数は、警察発表の半分いればマシではないか。

海外へと手を伸ばす暴力団

 一方で、ここにきて暴力団は急速な勢いで海外に進出している。暴力団とともに、フィリピン、マカオ、中国、インドネシア、マレーシアに同行した際は、それなりの“支部らしきもの”があることを確認した。実際、海外支部の名刺を作っている団体もある。

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 中国には暴力団の一行を専門に扱う旅行社すらあった。添乗員は「ヤクザはタチが悪い。大嫌い」と言っていたが、大金を落としてくれる顧客を手放すつもりはないようで、政府関係者に対する賄賂の仲介も行っていた。

 マニラには日本の暴力団が国内のような縄張りを作っているし、インドネシアでは入国も税関もフリーパスで、空港からは白バイがサイレンを鳴らしながら車を除のけ、ホテルまで先導してくれた。暴力団を日本から追い出しても、彼らはたくましく新天地を見つけるだろう。古い型の暴力団が姿を消す一方、国際化をすすめ、新ジャンルの暴力団が生まれている。