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幹部からかかってきた最後の電話

 つい先日、近畿地方の広域組織幹部から電話をもらった。彼は明らかに思い詰めていた。

「もうヤクザの時代じゃないんだ……俺はこれから死ぬ」

「だったらカタギでやっていけばいい。死ぬことなんてないです。なにを言ってるんですか、落ち着いて下さい!」

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「お前さんには……ヤクザの本当のことなんて分からないんだろう。任侠道なんてどこにもなかった。俺はもう失望した」

 電話は一方的に切られた。すぐかけ直したが電源が切られていた。若い衆の電話番号も知っていたのですぐコールしたが、やはり繋がらない。すぐさまバイクに飛び乗って事務所まで出かけた。到着した時、すでに彼は若い衆を撃ち殺し、最後は自分の頭を撃ち抜いていた。

「もうヤクザの時代じゃない……」

 震える彼の声は、いまも耳に残っている。

潜入ルポ ヤクザの修羅場 (文春新書)

鈴木 智彦

文藝春秋

2011年2月17日 発売