7月30日、『Go Toトラベルキャンペーン』が始まった。新型コロナウイルスの感染拡大により打撃を受けた地方経済の立て直しをかけた、政府の肝いりの景気回復策だ。しかしこのキャンペーンの実施をめぐり、小池百合子東京都知事が安倍政権に異議を唱えたことは記憶に新しい。
しかしこれは小池都知事の「責任回避策だった」と、フリージャーナリストの横田一氏は自著『仮面 虚飾の女帝・小池百合子』(扶桑社)で語る。同書から本文を引用する。
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『Go Toキャンペーン』後のコロナは『人災』?
吉村美栄子・山形県知事も会見で「首都圏の感染状況と豪雨災害を考えると、この時期に全国一斉にスタートするのはいかがなものか」と疑問を呈示。宮下宗一郎・青森県むつ市長は13日に「人が動かなければ、ウイルスは動かない。ところが、『Go Toキャンペーン』は人を動かす。今まで我慢してきたことが水泡に帰す。今までは『天災』と言っていられたが、そうなればもう『人災』になる」と釘を刺した。
これに野党も同調。立憲民主党の枝野幸男代表は14日に「政府はアクセルとブレーキを同時に踏んでいるような対応と言わざるをえない」と述べると、同日の野党合同ヒアリングで国民民主党の原口一博・国対委員長が「『Go To感染拡大』になる。踏みとどまるべきだ」と批判した。
小池はこれらの流れを、自らの責任回避に利用したともいえる。「Go Toキャンペーン」批判の口火をいち早く切ることで、安倍政権に異論を唱えた自治体トップや野党陣営の先頭に立つことに成功した。と同時に「選挙(自分)ファースト」の小池都政の怠慢が招いた「東京問題」から世間の関心をそらすことにも成功したのだ。
中途半端な方針転換
全国各地から批判が噴出しても、安倍首相は14日に官邸で「現下の感染状況、高い緊張感を持って注視をしている」と記者団に述べるだけだった。東京の感染者数が過去最高を記録してもなお、すぐにはキャンペーン開始の延期を決定しなかった。コロナ禍での安倍政権の“看板政策”を変えたくなかったのだろう。安倍の行動もまた、小池と同じく「選挙(自分)ファースト」の産物のようにも見える。7月16日になって、安倍政権はこのキャンペーンから東京発着を除外。東京都への旅行と都民の利用を対象外にした。これについて、昭和大学の二木芳人客員教授(感染症学)は7月17日の『東京新聞』紙上でこう批判した。
「極めて中途半端。22日から始めるのなら、東京と一体の生活圏で感染者が急増している埼玉・千葉・神奈川各県なども最低限、対象外にすべきだ」