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野党を引き立て役に、8.7%支持率アップ

「我々は1月末から新型インフルエンザ等特措法を適用すべきだと(主張してきた)。新たな感染症が発生した時に、最大限でできる法体系は特措法だ。これまでの対応が後手後手だったことを事後的に糊塗するようなもの。『判断を間違った』と謝って既存の法律を使うことが筋ではないか」(玉木)

 内閣支持率が下落した安倍の狙いは明らかだった。しかし野党が審議拒否など徹底抗戦をすることを避けて、改正法案は“スピード成立”した。安倍首相は成立した翌3月14日の会見で特措法改正法成立をアピール。「やっている感」の演出に成功したのだ。

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 野党を引き立て役にした“安倍ワンマンショー”の効果はすぐに数字に表れた。安倍政権の内閣支持率は前月比で8.7%(3月16日の共同通信)も上昇することになったのだ。中身はともかく、メディアに露出して「国民(都民)のために頑張っている」と演出する才能においては、小池も安倍も抜きんでている。そんな似た者同士が、国の最高権力者と首都のトップの椅子に座っている。

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『Go Toキャンペーン』が地方にもたらすカゲ

 2人には、地方の切実な声が耳に届かないのだろうか。福島県のある会社社長はこう訴えた。

「福島も山形も、今のところコロナ感染者はまれにしか出てきませんが、感染すると袋だたきに遭います。山形県の高畠町では、感染者の家に近所の住民から石が投げ込まれ、そこに住めなくなった人もいたそうです。私の住む福島県内でも全国チェーンの居酒屋の店員が感染したら、その周辺がゴーストタウンのようになり、近所のスーパーも売り上げが激減しました。感染情報が出ると、すぐに感染者を特定しようとする人物がゾロゾロと出てきます。私が感染したら、たぶん会社が潰れてしまうと思います。業界団体機関誌のインタビューを受ける予定で、記者が東京から来ることになっていましたが、電話かZoomにしてほしいとお願いし、了解してもらいました」

 感染者の多い東京や大阪から全国各地への人の移動を誘発する「Go Toキャンペーン」が、どれほど大きなリスクを地方に及ぼすのかを安倍は考慮しているのだろうか。東京だけで国全体の約半数の感染者を出す事態に陥ったことを小池がどこまで真剣に考えているのか。傍目から見ると、「選挙(自分)ファースト」が2人の行動原理の根底にあるとしか思えないのだ。(敬称略)

仮面 虚飾の女帝・小池百合子

横田 一

扶桑社

2020年8月7日 発売