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佐藤愛子さんの本はなぜ売れる? 変わらない「我は我」という大きな視点

『気がつけば、終着駅』(佐藤愛子 著)――ベストセラー解剖

2020/08/26
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『気がつけば、終着駅』(佐藤愛子 著)中央公論新社

『90歳。何がめでたい』が大ベストセラーになって以来、従来のファンにくわえ、70代~90代の読者層から人生の指南役として熱烈な支持を集めている作家・佐藤愛子。本書は雑誌「婦人公論」に、およそ50年の長きに渡って断続的に掲載されてきたエッセイ、インタビューの再録本だ。

「原稿は今の読者目線を基準にピックアップしました。おもしろいのが、単純に昔のものが古びているわけではない点です。ご自身は前書きで『佐藤愛子も変化しています』と書かれていますが、『我は我』という大きな視点は動いていない」(担当編集者の藤平歩さん)

 たしかに、離婚を悪と見なす風潮に否を突きつけ、再婚者の誇りを高らかに謳う1963年の「再婚自由化時代」から、死生観や仕事観について闊達な議論を交わす2019年の橋田壽賀子との対談まで、強靱な「個」は揺るがない。

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「当初、近年の読者が求める老いの心構えを説いたインタビューを目次の前半にしていました。ところが先生が、そのテーマは読者も自分も食傷気味だと、前半と後半を入れ替え、過去から順に人生を辿る形にされたんです。書名も、提案したものは語呂が悪いと『終着駅』に変更されて、やはりすごい方です。読者カードの戻りは他の本の数十倍。男性読者も多いです。みなさん、先生に活を入れてほしいのかも(笑)」(藤平さん)

2019年12月発売。初版1万5000部。現在18刷22万部

気がつけば、終着駅 (単行本)

佐藤 愛子

中央公論新社

2019年12月6日 発売

佐藤愛子さんの本はなぜ売れる? 変わらない「我は我」という大きな視点

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