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なぜ「紙の資料」は職場の生産性を下げるのか

プリントアウトしたデータでは「情報が古すぎる」

2020/08/26

 緊急事態宣言の発令により、各企業がリモートワーク対応に奔走するなか、宣言の発令前にすでに「本社出社率1.7%」まで低下していた日本マイクロソフト。その背景には「出社不要」の就業規則や、昨年夏には「週勤4日週休3日」制をトライするなど企業の生存をかけた働き方改革の実践があった。

 全世界の職場データを収集し、そこから「成果が上がる働き方」を分析するマイクロソフト。業務改善士としてあらゆる職場の問題に向き合ってきた著者が、日本マイクロソフトの多くの社員に取材し、その成果を解剖した『職場の科学』のエッセンスを紹介する。

(全3回の3回目。#1#2を読む)

©iStock.com

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「紙」は職場の生産性を下げる

 2009年から2019年までの10年間で、日本マイクロソフトでは79%のペーパーレス化を実現しました。

 外部のお客様向けの資料など、紙を使用せざるを得ないケースを除いて、社内業務はおよそ9割ペーパーレス化が実現されていると言います。お客様向けの資料も、デジタルデータが主流となり、いよいよ「紙不要」の働き方に変わってきています。新型コロナウィルスの問題もあり、リモートワークの広がりと相まってペーパーレス化は避けて通ることができません。

図 紙の削減を進めてきた日本マイクロソフト

 私はよく「紙は空気を読まない」と言っています。たとえば、コロナ禍において、国レベルで人の移動の自粛要請がなされる中、「契約書にハンコを押さなければならないので出社せざるを得ない」働き方が問題視されました。

 このように、紙を伴う業務は、世の中の空気を読まずに人を場所に縛り付ける働き方を強要します。技術的に、かつ法律面でも「デジタルへの移行が可能な業務であっても、未だに紙とハンコにこだわる(あるいはやめようとしない)」企業は少なくありません。

 私は今は地方都市に駐在して仕事をしていますが、一部のクライアントからの「書類を郵送します。記入して返送願います」のようなリクエストには苦慮しています。その書類を受け取るために、わざわざ東京の事務所に戻る必要があるからです。電子ファイルのやりとりでご容赦いただくか、駐在先に送付いただくかのいずれかをお願いしています。しかしながら、事前連絡がなくある日突然書類を送ってくる企業も少なからずあり……困ったものです。紙にこだわらければ、場所の制約を受けずに情報のやり取りができます。

「職場の科学 日本マイクロソフト働き方改革推進チーム×業務改善士が読み解く「成果が上がる働き方」 文藝春秋

「紙の情報」では古すぎる

 マイクロソフトでペーパーレスの話を聞いている際に、「情報の鮮度」の話も出てきました。

 マイクロソフトでは原則、情報はオープンになっていて、誰でもリアルタイムでアクセスできます。会議やプレゼンの場でも、みんながその場で、最新データにアクセスする環境が当たり前。

 もし、これが会議用の資料を作って、前日にプリントアウトして、人数分コピーをして……などしていたら、どうしたって前日までのデータになってしまいます。「それでは情報が古すぎる」とマイクロソフトの担当者は言います。