求められるアクセシビリティとスピード感
スピード感のある企業は、「○月○日の○時から会議をやりましょう」のような固定的な会議のみならず、たとえばビジネスチャットで話していた流れで、すぐにリモート会議が立ち上がり、関係者も巻き込む。このような、スピード感のあるコラボレーションを当たり前のように実践しています。
その環境では「会議用の資料を作る」より、今あるデータを、参加者各自がアクセスして参照しながら議論を進める。そのくらいのアクセシビリティとスピード感が求められます。
もはや「紙の資料はやめましょう」のレベルの話ではなく、紙文化ではこれからのコラボレーションを前提としたビジネス環境にまったく対応できないのです。
「クローズドな情報共有システム」が企業のブランド価値を下げる
さらにもう1つ、「情報共有」の観点からペーパーレス化を考えてみましょう。
情報共有には2つの要素があります。「今、この場で共有する」と「時間差で共有する」です。
「今ここにいる人たちだけで、この場で」情報共有するなら、紙資料の配布も悪くはないでしょう。しかし、「その場にいない人たちに、後で」情報共有をする場合、紙の資料はなかなか面倒です。資料をどこかに保管して、必要な人が来た時に渡す。あるいは探しに来させる。悪気なく資料をなくしたり、忘れたりするリスクもあるでしょう。
デジタル化された情報は、時間差、すなわち非同期の情報検索と共有をしやすくします。紙文化は「限られた人だけ」の情報共有をしやすくする、クローズドな情報共有スタイルです。クローズドな情報共有はコラボレーションを阻害します。中には「情報が欲しければ、俺のところに来い」のようなマウンティングをする人もいて、働く人たちのモチベーションやエンゲージメントを下げます(エンゲージメントとは、組織に対する帰属意識や愛着、仕事への誇りなどを意味します)。オープンで、コラボレーションのしやすい環境を実現するためにも、ペーパーレス化は避けて通れません。
かつてのタバコ部屋に象徴される、限られた空間での「井戸端型意思決定」や「井戸端型情報共有」が行われているところもまだまだ散見されますが、こうした組織ほどベテランだけが仲間内で結託し、若い層のモチベーションを著しく下げているケースが多いものです。
ペーパーレス化だけの問題ではありませんが、情報がクローズドになりやすい制度や文化は、それだけで働く人のエンゲージメントを下げ、ひいては企業のブランド価値を下げていってしまうのです。