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トップランナーだけが持つ真のオリジナリティ

 宮島達男は、1から9までの数字がLEDで延々と刻まれる「デジタルカウンター」を用いた作品を展示。暗闇の中に設置された《「時の海−東北」プロジェクト(2020東京)》は圧倒的だ。水に浸った無数のLEDが、各々時を刻んで輝き続けている。東日本大震災の鎮魂と記憶の継承を企図した作品である。

《「時の海−東北」プロジェクト(2020東京)》

 宮島がずっと追い続けてきた「それは変化し続ける」「それはあらゆるものと関係を結ぶ」「それは永遠に続く」というコンセプトが、作品世界に身を浸しているとストンと了解できる。

 奈良美智の展示スペースでは、動物や子どもをモチーフとした絵画、立体作品が無数に並ぶ。よく見ればどれも愛らしさと鋭利さ、親しみやすさと近寄りがたさが同居した、不思議な顔をしている。

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 目を閉じた女の子が描かれる《Miss Moonlight》は新作。この大きな肖像画もやはり静けさと情熱、無邪気さと神々しさといった相反する要素が同時に表現されていて、いくら眺め入っても見尽くせない印象を残す。

《Miss Moonlight》

 最後は杉本博司の展示となる。キャリアの初期につくられた《シロクマ》は、アメリカ自然史博物館のジオラマを写真に撮ったもの。シンプルな画面に、写真は何を映し出すのかという単純かつ深遠な問いを表した。

《シロクマ》

 最新作にして初の映画作品《時間の庭のひとりごと》が、腰を据えて大画面で観られるのもうれしい。自身が創設した「小田原文化財団 江之浦測候所」の四季折々をつぶさに撮影した作品となる。映画は総合芸術とはよく言われる。同作も杉本のこれまでの歩みをすべて入れ込んだような、集大成的な仕上がりとなっている。

 6人のアーティストが見せる作品世界は本当に多種多様で、かつ真のオリジナリティに溢れる。だからこそ世界のアート界に伍して、存在感を発揮することができているのだろう。

 会場をひと巡りすれば、日本のアートの現在形がありありと浮かび上がる。と同時に、「日本の」といった国別のくくり方は、アートの世界じゃすでにほとんど意味を成さないことも、トップランナーたちの作品がはっきりと示している。