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「優生思想につながりかねない考えを書き込んでいた」というふうに丁寧に書いているメディアもあれば、何の疑問も挟まずに「優生思想に基づいた書き込みをしていた」と伝えていたメディアもあります。

 記者という、言葉を正しく扱うことが求められる職業の人であっても「優生思想が何たるか」ということに対する認識が非常に甘くなっているのかな、と感じました。 

――コロナ禍についてはどう感じていますか。

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乙武 私も含め、生活で介護を必要とする人にとっては「濃厚接触を避けてください」と言われること自体が結構な精神的な重荷だったりもします。

「自分が誰かの負担になってしまっている」と感じる場面もコロナ前より増えますし、そのあたりのケアも必要だと思います。

 

「障害者であること」との距離感に葛藤した22年

――スポーツ紙が乙武さんの今回のツイートを大きく取り上げていたように、乙武さんは障害者のご意見番のように捉えられているところがあると思います。私自身、「乙武さんみたいな障害者ばかりじゃないのに、メディアは乙武さんばっかり」と思っていたところがありました。

 しかし、今回取材させていただくにあたって過去の記事を拝読したところ、『五体不満足』がベストセラーになってからの22年間、ご自身でも「障害者であること」との距離感に葛藤し続けてこられた印象を持ちました。これまでの歩みをどのように捉えておられますか。

乙武 『五体不満足』、もっと言えば私の存在そのものに、正直功罪あったと思います。

 健常者が障害者に触れる入り口としてはたぶん最適だったと思うんですよね。つまり、それまで得体のしれない存在として腫れ物扱いされがちだったのが、「意外に僕たちと変わらないんだ」「乙武さんという人を見ている限り、もうちょっとフランクに接してもいいのかもしれないね」というように垣根を下げた。そういう意味では非常に存在意義があったかなと思います。

 

――寄せられたお手紙の大半は非常に好意的なものだったそうですね。

乙武 ええ。9割7分ぐらいは「感動しました」「障害者に対する見方が変わりました」といった感想でした。

 一方、罪の部分としては、まだまだ解決していくべき障害者にまつわる課題が社会にあることについて考えることまで導けなかった。私という入り口に触れただけで、障害者全体に触れた気にさせてしまった、というところですね。 

――当時、障害者からの批判はありましたか。

乙武 すごいありました。あの本に対しての批判のほとんどは、障害当事者、もしくはそのご家族からのものだったんです。