経済成長著しいチャイニーズドリームの敗者である
最終的に、稼業として現地に進出していた工場の扱う商品がローテクで、上海市街ではそのような低付加価値の製品を製造する工場は不適切なので出ていくようにと命令されるに至ります。日本の出先機関であるジェトロにも相談しつつも結果的には泣き寝入りせざるを得ず、工場を共同出資者であった中国人に二束三文で売る羽目になりました。もちろん、そのような状況でも親身に相談に乗ってくれた中国人ビジネスマンには深く感謝をしています。さらには、進出していた深圳でも似たような問題が起き、こちらは出資金を取り返すために手配を頼んだ経理職員が退職金名目で資金をガメて面倒なことになったりもしました。
ここまで書くと踏んだり蹴ったりな状態ではあるのですが、中国に限らず海外でビジネスをしていると概ね似たようなトラブルが連続で起きるものであって、20代にそのような経験をたくさんしたので私自身も精神的にとてもタフになり、ちょっとやそっとのことでは動じなくなったというメリットもありました。日本人だからというので納得のいかない事象が起きたり、命の危険を感じたりしながら、目の前の問題に取り組んで切り開いていくというのは、もはや才覚というよりも根性です。また、たいして儲からなかったけど、苦労して頑張って仕事をやり遂げたというのは、思い返すと楽しかったなあと思えるので仕方ないかと感じるんですよね。
しかしながら、おそらく当時進出した日本企業で、技術を奪われたり、中国との共同出資でトラブルを起こされたり、盗まれた技術で競合企業を作られて損害を蒙ったり、違法な賄賂を求められて仕方なく応じたらそれが理由で訴追されて罰金を払ったり、という不当な扱いをされたところは少なくないと思うんですよ。私らが中国から撤退を決め、大連の事業を売却して生産設備をベトナムに移して新たな出資者を迎え入れたのは2006年でしたので、文字通り経済成長著しいチャイニーズドリームの敗者であるのは間違いないのですが、そういう乱暴な中国の国内政策の延長線上でアメリカでもビジネスをしているとなると、当然のように揉めることでしょう。
中国共産党も自国経済の成長途上で日本企業ほか進出した外資をいいように利用し、資産や知的財産を盛大にガメておきながら、いざアメリカで尊大な振る舞いをしアメリカの敵対国に対して企業活動を隠れ蓑に支援を続けて知的財産権の奪取・窃盗を続けているとすれば、当然にそんなものが許されないことになります。ここまで大きくなれたのは中国共産党の施策が大変優れていて、共産主義を掲げながら資本主義経済の政策扱いが上手かった一方、ノーベル平和賞をなぜか受賞したアメリカ前大統領のオバマさんが比較的穏やかな対中政策を続けてきたからだと思うわけですよ。
中国企業は日本でやりたい放題
問題の大きさに気づいてそのツケを自力で払わせようとするアメリカのやり方もまあ理解はできますし、一方で中国に何の手出しもできない我が国の外交当局の問題もまた少なからずあります。表向きは日本も東アジアの地域覇権国のような顔はしていますが、その実情は中国市場の対日開放も認められず、互恵的な関係といってもいまなお不平等な状態で中国企業は日本でやりたい放題できる状態を野放しにしているのもどうなのでしょうか。
そう感じるがゆえに、中国共産党がアメリカからの強いしっぺ返し戦略を喰らって反発をしているとしても「それは貴方がたも日本企業に対して90年代以降ずっとやってきたことでしょう」としか言えません。日本もまた、対中国企業に対していかなる経済安全保障の仕組みを講じ、とはいえ中国共産党とも過去のことは別として必要なときに必要な合意を得られ引き続き共存していく方策を考えていくフェーズに入っているのではないかと思いました。
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