麻生太郎 副総理・財務大臣
「(政治は)結果が大事だ。何百万人殺したヒトラーは、やっぱりいくら動機が正しくても駄目だ」
時事ドットコムニュース 8月29日
名言、珍言、問題発言で1週間を振り返る。また麻生氏から失言が飛び出した。29日に行われた自らが率いる自民党麻生派の研修会の講演で所属議員に向かって「(政治は)結果が大事だ」と語った。ここまではいい。問題はここから。「何百万人殺したヒトラーは、やっぱりいくら動機が正しくても駄目だ」と続けたのだ。これではホロコーストで何百万人ものユダヤ人を虐殺したヒトラーの動機が正しかったと言わんばかりである。
当然ながら野党からは批判が相次いだが、イギリスの大手新聞「ガーディアン」も麻生氏について「日本の麻生太郎大臣がヒトラーを称賛、彼は“正しい動機”を持っていたと発言」と報道した(8月30日)。
ネットでは「揚げ足取りだ」「曲解に過ぎる」と麻生氏を擁護する声も上がったが、当の麻生氏がすぐさま発言を全面的に撤回。「私の発言が、私の真意と異なり誤解を招いたことは遺憾」とした上で、「私がヒトラーについて、極めて否定的にとらえていることは、発言の全体から明らかであり、ヒトラーは動機においても誤っていたことも明らかである」と語った(朝日新聞 8月30日)。
麻生氏は2013年にも憲法改正論議に関して「ドイツのワイマール憲法もいつの間にかナチス憲法に変わっていた。誰も気が付かなかった。あの手口に学んだらどうかね」と講演で発言している。ナチス政権の手法を肯定したとも取れる発言は米国のユダヤ人権団体のサイモン・ウィーゼンタール・センターや中国外務省などが非難の声明を相次いで発表するなど国際的な批判を招き、麻生氏は発言を撤回した。
それにしても、麻生氏はなぜこんなにナチスとヒトラーにこだわるのだろうか? 国際社会においてヒトラーの動機というものは反ユダヤ、排外主義、アーリア民族至上主義とされている。そもそもヒトラーが反ユダヤ主義の思想を固めたのは、政界進出するはるか以前の1910年頃のことだ。どこにも“正しい動機”は見当たらない。麻生氏は「(ヒトラーの)動機」とは何だと思っていたのだろう。
9月1日、麻生氏は4日から予定していた訪米を中止すると発表した。米国ではペンス米副大統領と意見交換する予定だったが急遽中止となった。麻生氏は「北朝鮮情勢で安全保障の環境が非常に緊迫しているので、日本にとどまって危機対応に万全を期す」と理由を述べている(日本経済新聞 9月1日)。ということは、安倍首相が9月に予定しているロシア、インド、ニューヨークなどの外遊も中止になるのだろうか?(毎日新聞 6月29日) 米国でのヒトラー発言への批判を恐れて訪米を中止にした……という見方もあながち穿ち過ぎではないような気がする。