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5連続完投勝利のスーパーエース、ドラゴンズ・大野雄大のまっすぐな人間性に感動した話

文春野球コラム ペナントレース2020

 今、ドラゴンズで一番目立っているのは、大野雄大さんで間違いないと思います。

 球団タイ記録の5連続完投勝利、2連続完封勝利、完投勝ちした5試合のうち4試合で2桁奪三振。昨日は惜しくも負けてしまいましたが、なんと6連続完投! 大野さん(ドラゴンズには大野奨太選手もいますが、今回は「大野さん」で統一させていただきます!)のような先発完投で勝てる投手は、令和の時代になかなかいません。これぞエース、いやスーパーエースですよね。

ドラゴンズの“スーパーエース”大野雄大 ©文藝春秋

 今年の大野さんからは「勝ちきるまで投げる」という覚悟を感じます。

 完投して試合終了の瞬間までマウンドに立とうとしている。そこが勝てなかった時期と一番違うところでしょう。

 シーズン当初はなかなか勝てませんでした。途中で降板して、代わった投手が打たれて勝ちが消えてしまったこともあります。7月の試合で、ベンチで交代するかどうか聞かれて「任せます」と答えたことがあったそうですが、それを聞いたとき、僕は少し残念な気持ちになりました。

 誰がどう見ても「ドラゴンズのエースは大野」なんです。0勝で終わったシーズンもありましたが、それは変わらないと僕は思っています。だからこそ「任せます」とは言ってほしくなかった。

 でも、そこから立ち直って5連続完投勝利。「シーズンの途中でこんなに変われるものなんだ」と思うぐらい、投球自体もさることながら、気持ち、気迫が前に出るようになりました。マウンドでの立ち居振る舞いからもそれが伝わってきて、きわどい判定でボールになってもがっかりするようなことはないし、ホームランを打たれたときの苦笑いもなくなりました。そもそも最近はホームランも打たれていませんが!

 今は試合が終わるまで、気持ちのブレが一切見えません。マウンドに立つ姿はまるで「不動明王」。もはや大エースの貫禄すらあります。

筆者・辻本達規(BOYS AND MEN) ©カルロス矢吹

鈴木誠也に完璧リベンジ達成!

 大野さんは今まで、誰もが認めるストレートの球威を持っていながら、なかなか勝ちきれない時期が続いていました。覚醒したと言われる昨年でも結果は9勝8敗。ポテンシャルを発揮しきれていなかった時期が長かったように思います。

 僕の野球経験はプロの方々とはまったく比較になりませんが、ピッチャーに気持ちの余裕があるときとないときは、同じ球を投げていてもバッターが感じる「圧」が変わってきます。ベンチにいるときに「こりゃ、打てそうにないな」と思いながらバッターボックスに立つと、やっぱり打てない。逆に、ピッチャーがすごい球を投げていても、「なんだ、打てそうだな」と思ってバッターボックスに入ると、実際に打ててしまうことがある。

 本拠地開幕戦だった6月26日のカープ戦は、森野将彦さんとBOYS AND MENのメンバーと一緒に中継の副音声を担当させていただきましたが、先発した大野さんがカープの四番、鈴木誠也選手に2本のホームランを打たれて敗戦投手になりました。大野さんはこのとき「投げる球がない」と漏らしたそうですが、森野さんは「今の誠也には何を投げても打たれる」と言っていました。大野さんの投げる球が悪いのではなく、鈴木誠也がすごいんだ、と。

 ところが、9月1日のカープ戦では「これがあの鈴木誠也なの?」と思うぐらい大野さんが完璧に抑えていました。

 二人は日本代表に選ばれる選手ですから、力の差は本当はないのかもしれません。そのときの調子や気持ちの持ち方で結果が変わってくるのでしょう。今の大野さんからは相手が鈴木誠也選手だろうが誰だろうが「俺が抑えてやる」という気迫がみなぎっています。マウントを取られるのではなく、マウンドから相手を見下ろしている。

 大野さんは明るい方ですが、繊細さを持ち合わせている人です。今はしっかり心をコントロールして戦えているのではないでしょうか。直接お話を聞いているわけではないので、本当のことはわかりませんが、きっと僕だけじゃなく多くのファンの方もそう感じていると思います。だから安心して見ていられる。それがエースの証なんでしょうね。