ファンタジーベースボールはなぜ日本で流行らない?

  これはオリックスファンにというのではなく野球ファン全体に聞きたいのだが、なぜ日本ではファンタジーベースボールは流行らないのだろう?

 文春野球読者に対して改めて説明する必要はないかもしれないが一応書いておくと、ファンタジーベースボールは球界から活躍すると思う選手を指名して架空の自チームを編成し、その選手たちの活躍度を他プレイヤーと比較して競うゲームである。アメリカでは数百万人の愛好家がいると言われ、MLB公式サイトはもちろん、主要スポーツメディアのウェブサイトにはだいたいファンタジーのコーナーがある。シーズントータルで競うものもあれば今日の1試合だけとか、打点など特定の要素にフォーカスしたものとか、派生ルール・システムがいろいろとある。

 このファンタジーベースボールがアメリカではめちゃめちゃ人気があり、日本では全く人気が無い。たぶん認知度から無い。サービスを続けているところもあることはあるのだが、どちらかというと死屍累々というか、いくつもの有力ネットメディアが大会運営に挑戦してはサービス停止に追い込まれてきた。

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 筆者は競馬評論家を本業としているので、野球にも「プレーに自己の利害を投影させることができるなにか」があったらもっと面白いのにと思う。競馬だけでなく公営競技は馬券・車券・舟券があるので、現金というリアルな利害が競技とリンクする。また競馬界ではペーパーオーナーゲームという、デビュー前の2歳馬を選んで架空の馬主となりダービーまでの成績を競うゲームがある。まさにファンタジー的なものなのだが、仲間内での競い合いも、メディア主催の大会も人気がある。

 なのになぜ野球ではファンタジーが盛り上がらないか。推測するに、チームを応援する文化が強く、他チームの選手をピックして勝つということへの関心が低いのかもしれない。かといって、たとえばオリックスファンがオリックスの選手ばかり選んでファンタジーに参戦しても、ペナントレースと同じ結果になってしまう。

 また、鳴り物からテレビ観戦に至るまで野球の応援はこういうものという形が完成されすぎていて、それ以外への想像力が及ばないのかもしれない。

 それでもファンタジーベースボールが一度普及すればかなり面白いはずなので、例えばNPBがタイトルスポンサーを募ってオンライン大会を主催するとか、スターOBをリーダー的に起用するとか、球界の偉い人に突破口を発見してもらいたいものだ。

海外でなら日本のプロ野球にも賭けられる

 日本におけるファンタジーベースボールが本当に脈ナシならば、他の切り口による「プレーに自己の利害を投影できるなにか」を模索するのでもよいと思う。

 ここで敢えて、日本ではもっと無理な話を最初に書いてしまう。「野球に対する賭け」だ。サッカーくじのような低的中率高配当・かつ高控除率(ファンが損)なものではなく、ストレートなギャンブルの話。

 海外ではNPBについても売られている。たぶん「売りますよ」という挨拶もされていないと思われるが……イギリスのブックメーカーや、オーストラリアのTAB(馬券公社のようなもの)では日本の野球に賭けることができ、日本人も現地に行っている間は店舗で賭けることができる(日本からネットで買ったら違法)。

 賭け方は、単純な勝ち負け、設定されたハンデ(点差)を加味しての勝ち負け、点差を自分で選ぶ勝ち負けなどいくつもある。

 私の場合オリックスファン・ネガティブ班なので、勝てそうな試合ほど敢えて敵の勝利に賭け、「勝利か現金のどちらかが手に入る」という構えを築くこともある。【写真1】はイギリスでオリックスvs日本ハムの、敢えて日本ハム勝利に賭けた例。2017年8月6日、オリックスの先発が西勇輝(現阪神)、日本ハム先発上原健太で勝利時オッズはオリックス1.4倍、日本ハム2.8倍。敢えて日本ハムの勝ちに賭け、現金を失って勝利を得た(5-2でオリックス勝利)。

【写真1】2017年8月6日、イギリスでオリックスvs日本ハムの、敢えて日本ハム勝利に賭けた例 ©須田鷹雄

 もちろんオリックス勝利に賭けることもある。【写真2】はオーストラリアでオリックスの2点差勝ちに賭けた例(2019年6月16日・対阪神戦)。9回に入った時点でオリックスが5-3と2点リード! ……から、増井浩俊が2点取られて引き分けという、悲劇的なハズレ方をした(せめて1点差勝ちとかであってほしかった)。勝利投手の権利を持っていた先発・田嶋大樹も落胆しただろうが、700豪ドルが消えた筆者もそれなりに落胆した。

【写真2】2019年6月16日、オーストラリアでオリックスの2点差勝ちに賭けた例(対阪神戦) ©須田鷹雄

 いずれにしても日本でスポーツベッティングが合法化される可能性は低いと思うが、一応事例として紹介しておく。