親や先生の言うことを聞かない、学校生活に馴染めない、こだわりが強すぎる……。そんな子どもが身近にいる場合、大人は何をしてやれるのでしょうか。
東大先端科学技術研究センターで「異才発掘プロジェクト ROCKET」のディレクターを務める中邑教授は、「自分には仲間はいるけれど、友達はいない。子どもだってそれでいいのではないでしょうか」と話します。
中邑教授が上梓した『育てにくい子は、挑発して伸ばす』から、子どもの友達づくりについて、考えます。
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保育園や幼稚園、学校に入れば「みんな仲良く」できることが褒められ、会社に入れば「一致団結」して仕事に取り組むことが求められます。特別な支援が必要な子どもの教育も、できるだけ通常学級に参加させるインクルーシブ教育が世の流れです。障害のある子どもが教育から排除されてきたこれまでの社会の是正には必要な考えではありますが、障害のあるなしに関わらず、集団が嫌いな子どもにも無理やり、集団の中での活躍を求めることは、いかがなものかと感じてもいます。
この同調圧力は相当なものなのでしょう。人と一緒に何かをするのが苦手な人たちはそのことを強く悩むようになっています。自分の子どもに友達ができないと、親は心配で仕方がないようです。小学4年生の息子の現状に、気が気でない様子でやってきたお母さんも、そんな1人です。
母「できるだけ他の子と一緒に学ばせて、社会性を身につけさせたいんです」
私「彼はちゃんと私に挨拶ができるし、ゴミを拾っていましたし、もう十分では?」
母「でも、友達もできないし、学校ではいつも、独りぼっちです」
私「でも息子さんは好きなプランクトンの本を読んでいるので、寂しいと感じていないのでは?」
母「でも、友達ができないと困りますよね?」
私「息子さんが好むような、かなり専門的なプランクトンの話に興味を持つ子どもは、同じクラスにいないのではないですか?」
母「もっと優しく、息子の話を聞いてほしい。それが友達だと思います」
私「でも、お母さんもプランクトンの話に辟易してませんか?」
母「まあ、そうですけど」
私「僕は友達いませんよ。仲間はいますけど……」
一般的に、男性よりも女性のほうが、集団での生活が苦にならない人が多いようですし、そんなお母さんから見ると、クラスの輪に入っていけない息子さんは、理解できないのかもしれませんね。しかし、子どもにはそれぞれ特性があります。みんながみんな、社交的であるわけがありません。人に合わせられないことは悪いことでなく、人と違った道を1人で進むことができる強さを持っていると見てはどうでしょうか。