本当に打ち込みたいものがあれば、休み時間に1人でも寂しくありません。友達といるよりは好きなことを1人で続けたいわけですから。私も子ども時代に、そんな時期がありました。昆虫が大好きで「ゾウムシ」に興味が行くと、ゾウムシを見つけたくて仕方ありませんでした。学校が終わると森を歩き、ゾウムシを探しながらの帰宅です。こんな時は、学校の友達は邪魔でしかありません。この性格は今も変わらず続いています。
私は何かを1人で続けていれば必ず、他の子どもとは明らかに違う、突き抜けたユニークさが身につくと思っています。大人になれば、そのユニークさを利用したい人が向こうからやってきます。こちらから仲良くしようとアプローチしなくても、みんなと仲良くするのが得意な人がやってきて、仲間になります。仲間づくりの部分は、それが得意な人に任せておけばいいのだと思います。
ユニークな子どもたちは、ユニークさゆえ、学校の子どもたちの中で孤立するかもしれません。だけど、それをあまり意識していない子どもは、1人で好きなことに打ち込めるその状態が幸せなのです。それを周囲が心配して気づかせるから悩み始めるケースもあります。
彼らは小さな学区の中だけで生きると孤立しますが、もっと広い世界に出れば、仲間がたくさんできます。プランクトン好きの少年少女は学区には1人も見つからなくても、都道府県単位で探せば、何十人もいるでしょう。大人になって、それを専門にする研究や仕事に就けば、もっとプランクトンに興味のある人に出会う機会が増えます。
友達作りに無駄なエネルギーを使って、かえって傷つくことがないようにしたほうがいいのかもしれません。
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中邑賢龍(なかむら・けんりゅう)
1956年、山口県生まれ。東京大学先端科学技術研究センター人間支援工学分野教授。異才発掘プロジェクト ROCKET などICT(Information and Communication Technology)を活用した社会問題解決型実践研究を推進。共編著に『タブレットPC・スマホ時代の子どもの教育』(明治図書)など。