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和田さんの火を絶やさない

 和田さんは持ち上げられたりするのは嫌なんだけど、自分の作品を絶やしたくないという気持ちはあったと思います。和田さん自身、自分の作品もコレクションもすごく丁寧にとっておいているわけです。それは「作品がなくなってしまうのは嫌だ」という気持ちからだと思うので、残っている人間が守ろうね、と。

 亡くなったあとも和田さんにはいろんな依頼がきているそうで、次男の率さんが「和田さんならどう思うか」を一生懸命考えて、それに合わせた結論を出しているそうです。

 

 たとえば亡くなってから和田さんの本を再版するときに、バーコードの問題が出てくる。和田さんは「バーコードをカバーに印刷するのは嫌だ」と言って、いろんな工夫をしたり出版社と喧嘩をしたりしてきたわけです。そんな人の本が再版されるときに、「もう亡くなっているからバーコードを付けましょう」となるのはどうなのか? 和田さんなら「死んでるからってダメだよ、付けちゃ!」って言うだろうということで、率さんは断るんだそうです。和田さんが乗り移ったかのようにして判断していくのは、どれだけ簡単じゃないことかと思います。

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 でもその「和田ルール」のままだと火が絶えるということもあるので、それをどうするかをこれから考えていかなくちゃいけない。「和田さんの火を絶やさないようにしていくことが、僕らの仕事だね」ってことを率さんとも話しています。 

 今回のほぼ日手帳も、「和田さんの火を絶やさないための仕事」だと思っています。でも、和田さんの遺志を継ぐというか、和田さんを大切に思って和田さんのお手伝いをするというのは、なかなか簡単なことじゃないぞと思います。クリエイティブな能力が必要になる仕事ですから。

 
ほぼ日手帳2021の元になった「週刊文春」1977年5月12日号の表紙
ほぼ日手帳2021の元になった「週刊文春」2002年11月7日号の表紙

一番たいへんなのは率さんですけど、僕も結構ちょうどいい仕事ができているかもねと思っているんです。今のところは和田さんが僕に合格点をくれている気がします。「糸井がやってるの、ちょうどいいよ」って。

「週刊文春」もまだ和田さんの表紙をやめないじゃないですか。ずっと和田さんの絵のアンコール企画を続けている。あれも大変なことですよね。和田さんに怒られないギリギリのところで和田さんの火を絶やさないように何かしようと、みんながしている……という感じがします。