ドラマが大ヒット中の『半沢直樹』シリーズを筆頭に、企業を舞台にした“お仕事小説”がいま注目を集めている。同じく池井戸潤氏原作の『花咲舞が黙ってない』をはじめ、『これは経費で落ちません!』や『校閲ガール』、『水族館ガール』などが人気で、続々とドラマ化やコミック化されているのだ。
「やられたら、倍返しだ!」は、言わずと知れた半沢直樹の決め台詞だが、普通の経理女子が「会社は私が守る!」と活躍する、新感覚のお仕事小説が誕生した。あるときは経理課のベテランOL、あるときは社内の不正に立ち向かう“お局美智”! 期待の新人作家・明日乃氏が描く『お局美智』は、果たして第二の『半沢直樹』になれるか?
特命は「社員の会話を傍受すること」
舞台は地方の中堅企業「NOMURA建設」。勤続18年の佐久間美智は、同僚から密かに「お局」と呼ばれる経理課のOLだが、彼女には誰も知らない秘密の顔があった。社内にはびこる不正やスキャンダルを未然に防ぐため、ハイテク盗聴システムを駆使し、社員の会話を傍受する──。そんな特命を、先代社長から負わされていたのだ。
セクハラ常習犯の役員にパワハラ上司、社長の愛人問題や不正会計、労災事故隠しなど、NOMURA建設はトラブルが続出。美智は盗聴システムを使って密かに社内情報を収集し、大胆な行動力で次々と難問を解決していく。
そんな美智の前に、業界の怪しい影が立ちはだかる。大手ゼネコンとの不正工事密約、ライバル企業による吸収合併、暗躍する地元ボス議員の秘書……。絶体絶命のピンチに立たされた会社を、“お局美智”は救えるのか──?
2017年、文藝春秋が小説投稿サイト「エブリスタ」とコラボすることで始まった「週刊文春」小説大賞。その第1回大賞受賞作品に選ばれたのが『お局美智』だ。その後、電子書籍オリジナル作品として続々とシリーズ化され、このたび全10作をあらたにまとめ、2分冊で文庫化されることになった。8月に『お局美智 経理女子の特命調査』が、9月に『お局美智 極秘調査は有給休暇で』が連続刊行された。
元ヤクザ組長のデイトレーダーや暴走族出身の女トビ職が登場するなど、エンタメ小説としての魅力に溢れた『お局美智』だが、「働き方改革」や「シェアハウスへの不正融資」、「建築資材のデータ偽装」など現実の社会問題や事件が物語の中に組み込まれた、骨太な作品という一面も持つ。そんな『お局美智』の世界観について、著者である明日乃氏に書面でインタビューをお願いした。ちなみに明日乃氏は、性別年齢を一切公表していない。