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日米「どちらもが敗者」の戦争を、映画『ミッドウェイ』はどう描いたのか

2020/09/06

source : 週刊文春

genre : エンタメ, 映画

 日米の戦いを描くハリウッド映画。そう聞くと、日本が酷い描き方をされているのではと懸念を抱くのは、日本人なら当然だろう。だが、嬉しいことに、『ミッドウェイ』は、そんな予想を裏切ってくれる。ドイツ出身のローランド・エメリッヒ監督は、この映画を作るにあたり、日米を対等に扱うことを最重視していたのだ。

ローランド・エメリッヒ監督

「戦争には、勝者も敗者もいない」

「日本人を『敵』にしないと、最初から決めていたよ。日本人は悪い人たちじゃないんだから。ちょっと傲慢なところはあったかもしれないが、高潔で立派な人たちだ。彼らもヒーローなんだよ。そもそも、戦争には、勝者も敗者もいない。どちらもが敗者。どちらも命を失うから。戦闘機が撃ち落とされるシーンでも、撃ち落とした側のパイロットが喜ぶ様子は入れていない。人が死んだのだからね。それに、この映画で一番感動的なのは、ラストの日本人のシーンだと、個人的には思っている」。

 本来、エメリッヒの得意分野は、『インデペンデンス・デイ』『2012』のようなディザスター映画だ。そんな彼が20年以上もミッドウェイ海戦の映画を作りたいと思っていたというのも、意外である。

Midway ©2019 Midway Island Productions, LLC All Rights Reserved.

「ミッドウェイ海戦は、歴史に残る、最も複雑で、興味深い戦い。アメリカ軍のカムバックストーリーでもある。だからこの映画もパール・ハーバーから始めたんだよ。パール・ハーバーで何が起こったのかを知らなければ、大逆転のすごさがわからないよね。負けていた側が一転して勝つという話は、いつだっておもしろい。もちろん、この話は過去にも映像化されてきた。でも、そのどれもあまり良い出来ではないので、僕の手で語ってみたかったのさ」。

「米軍側の役者たちは、完成作を見て感激していた」

 米軍側のキャストは、ウディ・ハレルソン、デニス・クエイド、パトリック・ウィルソン、アーロン・エッカート、エド・スクラインら。日本軍側では、豊川悦司が山本五十六、浅野忠信が山口多聞、國村隼が南雲忠一を演じている。戦争中の敵同士なのだから当然だが、日米の軍人が同じシーンにいることは、冒頭のウィルソンのシーンを除けば一切ない。撮影も、まず米軍側のシーンをすべてやり、セットを日本軍仕様に組み替えて日本人のシーンに移ったため、現場で日米の役者が交流することもなかった。

Midway ©2019 Midway Island Productions, LLC All Rights Reserved.

「米軍側の役者たちは、完成作を見て、日本人たちはこんなことをやっていたのかと感激していたよ。テスト上映でも、参加してくれた観客の多くが、『日本人の演技がすばらしかった』と褒めていた。日本人のキャスティングについては、マーティン・スコセッシの『沈黙-サイレンス-』のプロデューサーに相談したんだ。彼が、あの映画でお世話になった日本人女性を紹介してくれ、彼女が、この役にはこの俳優はどうかと提案してくれたんだよ。その後、それらの俳優と、スカイプで、通訳を通して面談をした」。