「リアルに見えないエフェクトは許されない」
舞台は、常夏のハワイと北太平洋。だが、映画のほとんどは真冬のモントリオールのスタジオで撮影されている。迫力ある戦闘シーンは、すべてブルースクリーンで撮影されたという。そこはさすがにディザスター超大作のベテランのなせるわざだ。
「今作で一番大変だったのは、そこだね。何もないところから作ること。また、この映画では1500のビジュアルエフェクトが使われている。その数自体も、この手の映画にしたら普通じゃないが、クオリティも高い。テーマがテーマだからこそ、リアルに見えないエフェクトは許されないんだ」。
製作費は、およそ1億ドル(約100億円)。これだけのエフェクトを使うとなると、もっとかかるはずだったのだが、『2012』でエフェクトの仕事を依頼した、当時駆け出しだったふたりが、「恩返しをさせて」と破格で引き受けてくれたという。驚くことに、エメリッヒと製作パートナーのハラルド・クローサーは、この資金を全部自分たちで集めている。今作は、史上最高にお金がかかったインディーズ映画なのだ。実現までに長い時間がかかった大きな理由も、そこにある。お金がいよいよ集まると思ったら誰かが抜け、また電話をかけ始めるということが、何度となく繰り返された結果、今になったというわけだ。
「でも、結果的に、それはむしろ映画のために良かったと思っている。ひとつには、その間にテクノロジーが進化した。そしてもっと大事なことに、またナショナリズムが台頭してきている。アメリカだけでなく、ヨーロッパでも。ナショナリズムとファシズムがどんな不幸をもたらしたのか、多くの人は忘れてしまったようだ。民主主義のために、若いアメリカ人が戦ったのだということを、今こそ思い出してもらいたい」。
「映画の最後で、日本とアメリカ、両方の戦士にこの映画を捧げた」
昨年秋に公開されたアメリカでは、堂々の首位デビューを果たした。日本の観客からも、同様に温かく受け入れられることを、エメリッヒは心から望んでいる。
「今作は、日米両方の語るものだ。僕は、映画の最後で、日本とアメリカ、両方の戦士にこの映画を捧げた。戦争は、二度と起こしてはならない。僕はそれを伝えたい。それに、スペクタクルとしても、とても楽しいよ」。
Roland Emmerich/1955年、ドイツ生まれ。96年、製作総指揮、脚本も手掛けた『インデペンデンス・デイ』が全世界でメガヒット。エンターテインメントの名手として名を馳せる。代表作に『ユニバーサル・ソルジャー』『GOZILLA』『パトリオット』など。
INFORMATION
映画『ミッドウェイ』
9月11日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷他全国ロードショー
https://midway-movie.jp/