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「スケボーは一種のセラピーでした」乗りながら考えた、行き詰まった人生の乗り越え方

映画『行き止まりの世界に生まれて』ビン・リュー監督インタビュー

2020/09/04

「物語とは、キャラクターが何かを求めて旅をすること」

ビン・リュー で、自分が14歳の頃に撮っていたスケボーのビデオを挿入することにしました。僕がスケボーのフィルマー(撮影者)として育ったことがわかるように。そこにザックやキアーの子どもの頃のビデオも混ぜていこうと。

 その膨大な映像素材と独りで1年以上格闘しました。仕事の合間に毎日、編集して、編集して、編集して、でも、いくつものバージョンができるだけで、いつまで経ってもまとまりませんでした。

 そんなとき、人の紹介でプロのドキュメンタリー編集者ジョシュア・アルトマンが手伝ってくれることになりました。ジョシュアは僕に映画について大きなことを教えてくれました。物語とは、キャラクターが何かを求めて旅をすることなんだと。それで彼と最初から編集し直しました。膨大な映像素材から物語を見つけ出そうとしたんです。

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 物語を見つけるのは簡単でした。幼い頃の傷のために人生を進めなくなった3人が自分の過去や家族と向き合ってそれを乗り越えて成長しようとする物語です。

それぞれが抱えているもの

 ドラマは既にそれぞれのシーンにあった。たとえばキアーはいつも笑顔の陽気な青年だが、時どき、大事なスケボーを叩き割る。

ビン・リュー キアーは大きな悲しみを内側にいつも押さえつけていたんです。悲しみは彼の中で怒りに変わっていました。それが時に、スケボーを壊すことで噴出するんです。圧力バルブみたいなものです。

 キアーは、自分を虐待した父親の墓を訪ねます。父が死んでから初めて。その時、ずっと押さえつけていた感情がいっきに爆発します。僕はあんなことになるなんて予想してませんでした。

 また、ビンは、ザックの恋人ニナを自動車の中で撮影していて、突然、「ザックに殴られてるの」と告白される。しかも、それを言ったことをザックには決して言わないでと念を押される。

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ビン・リュー 結局、ザックは家族を捨ててデンバーに逃げてしまうんですが、もう人生のドン底に滑り落ちていく感じでした。

 でも、僕はそのことでザックを批判したり、虐待のことを尋ねたりしませんでした。ザックはいつもジョークで逃げて決して本当の気持ちを言わないし、ニナからも問い詰めないで、とお願いされてたからです。

 ところが、ふとした会話の最中に、ザックは自ら、ニナを殴っていた事実を明かしてしまう。

ビン・リュー インタビューって面白いですね。双方向のコミュニケーションだから。ただ質問をぶつけるだけじゃ、本当の答えは返ってこない。こちらが相手を裁かないとわからせないと。