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河野太郎 ★4.5 「ブルーインパルスに見たリーダーシップ」

 河野さんと言えば今年6月、イージス・アショアの配備断念を決断したときの姿が印象に残っている人も多いでしょう。もちろん、ミサイル防衛の代替案が決まっていない中での配備断念は、外交と安全保障の政策面で考えれば決して高評価の判断とはいえません。しかし、安倍首相自らが推進してきたイージス・アショアを、あえて押し返した政治家としての「胆力」には目を見張るものがあります。

河野太郎氏 ©️文藝春秋

 また、今年の5月末、コロナ第一波の混乱の中、医療従事者に感謝と敬意を表して国民こぞって「連帯」の姿勢を見せようと、防衛大臣として航空自衛隊のブルーインパルスの出動を決断したことも印象的でした。日本では賛否両論ありましたが、国民の統合を重視する欧米では当然の決断です。コロナ対策をめぐって分断が続く日本の社会状況下で、河野氏がリーダーシップを発揮したことは大事なことだったと思います。

 こうしたリーダーシップだけでなく、政治家としての経験も豊富。首相にも果断に意見しながら、大臣として外交と安全保障の両方の経験を重ね、流暢な英語で国際社会にも多くのコネクションをもっている。私が会った欧米の外交専門家からも高く評価されています。

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 気がかりなのは、時には独りよがりにもなりかねない、その群れない性格。足の引っ張り合いが横行する典型的な「日本社会」である自民党では、敵を作りやすいタイプです。

 ただ、その河野さんらしさを犠牲にしては意味がないのですが、今回の総裁選では所属派閥の領袖、麻生さんが「菅さん支持」を表明したことで、河野さんは出馬を見送ってしまいました。かつての小泉純一郎首相のように「親分」の言うことを聞かず、勝ち目のない状況でも総裁選に出続ける姿勢こそ、従来の河野さんのキャラクターだったはず。ここで派閥の論理で動いてしまったことは、彼にとってむしろ大きなマイナスになるのでは、と思います。

 コロナ禍の対応のみならず、経済の大幅な悪化、そして暴走する中国と激化する米中対立……。日本はまさに非常事態にありますから、胆力もあり、外交と安全保障の経験もある河野さんは、最前線で活躍しなければならない政治家の1人。次の総裁の任期は1年ですから、その次のチャンスに真価を発揮できるかが問われることになります。