小さいときは自分の名前が恥ずかしかった
ふせでぃ うれしいです。いろんな世代の人に読んでほしいです。
——なぜキュンキュンするかというと……各作品、刺さる至言が多いんですよ。
かわいい顔で恋人とクリスマスの約束をするシーンの欄外に「ゆびきりなんて気休めなんだけどね」(『君の腕の中は世界一あたたかい場所』)とあったり。「自分のことは自分で喜ばせるしかない」とかね。ひょいと出てくる言葉にハッとする。
ふせでぃ 使えそうなフレーズは思いついたらメモしますね。タイトル候補、マンガのセリフになりそうなの、ポエムとか。
——70~80年代にかけてマンガ界には「ポエム」文化全盛(萩尾望都や竹宮惠子らが活躍。物語のクライマックスにしばしばポエムが挿入される)の時代があったので、今、一周まわって現代のふせでぃ先生の表現として支持されているのが新鮮です。
ふせでぃ そうなんですか。じつは私、詩っていうものに小さい頃からずっと抵抗があったんです。本名が「詩織」で。並びかえると「おしり」だし、当時はイジメられるんじゃないかとビクビクしていました(笑)。なのに自分が今ポエマーになってて驚きます。
担当編集 その「ポエム」に対するやや突き放した目線が、作品の中では客観性になっているんじゃないですかね。
——昔の「ポエム」ってもっとロマンティックかつセンチメンタルで。ふせでぃ先生の「《現代の》ポエム」は現実的なんですよ。自分に対して冷静にツッこむ視線があるからでしょう。その態度はストーリー上にも反映されていて、いわゆる恋愛だけの少女マンガと違う理由もそこにあるかもしれないですね。
ふせでぃ たとえば私は、映画の『白雪姫』を見ても、疑問がわくんですよ。白雪姫が眠ってしまった後のお世話は小人さんたちがしていたのに、ある日いきなり王子様がやって来て、白雪姫をかっさらってしまうのが許せないと思ってしまうんですよ。小人さんたち、かわいそうじゃん!って。