デッサンで生まれた「ふせでぃさんの中の人」と「それを見つめる自分」
——ものの考え方などで影響を受けた存在はいますか?
ふせでぃ 手塚治虫先生の『火の鳥』には影響されているかもしれません。小学校の図書室にあって。それから、自分にとって大きいのはデッサンです。美大受験に必要なので、毎日予備校でデッサンをやらされていて。デッサンは絵を描く練習だけど、自分のことを客観視する練習でもあるんです。デッサンをやる時は、頻繁に立ち上がって、引いて見るんです。
——自分の絵を、距離をとって見るということ?
ふせでぃ それもあるし、周囲の人と見比べる意味もあります。みんな同じ対象物を見て、「せーの」で描き始めるのに、みんな違う絵になるんですよね。うまい人と比べて、なんで自分はこんなに下手なのか。どう下手なのかを見つけなきゃいけない。そして、どうやって解決するかを考える。「なぞなぞ探し」をずっとやってる感じ。
——自分で「問い」を見つけて、「答え」も自分で出すんですね。どこがダメなのか解消するには「理由」も見つけなきゃならない。
ふせでぃ それには一回自分から離れないとダメなんですよね。デッサンは精神的な、人間的な訓練になったと思います。デッサンをやるといろんなことがわかるんです。
——デッサンの経験が、感覚的に描く「ふせでぃさん」と、客観視する「ふせでぃさん」を生んだのかもしれないですね。
ふせでぃ そうかもしれません。実作業する自分に、「今ペース遅いよ」とか「好きなとこばっか描きこみすぎだからもっと全体見て手を動かしてね」って言うもうひとりの自分……。デッサンは、自分を見つめる訓練で、生きていることすべてにおいて使える技術だと思います。
——今日は興味深いエピソードをたくさん聞かせていただき、いろいろ納得しました! ふせでぃ先生がこれからどんな主人公、どんな物語を描いていくのかとても楽しみです。
ふせでぃ 男の子の主人公とかも描いてみたいですね。今マンガを描くことがすごく楽しいので、いっぱい描きたいです。なんだかマンガを描いてないと落ち着かないみたいになりつつあります。いろんなことをお話ししましたけど、作品の受け取り方はそれぞれだと思っています。私の作品から、少しでも何かを感じてもらえたらうれしいです。