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 もしトランプ氏が大統領選で敗北して、ジョセフ・バイデン大統領が誕生しても、日本により一層の安全保障政策面での役割と責任を求めてくる可能性が十分高い。米国の国力が相対的に低下してゆく中、戦略的競合相手国である中国の覇権主義的な台頭に対して、米国だけでは対抗しきれない現実がある。米国の同盟国がより重要な役割を果たすことが米国の安保戦略にとって不可欠とされている。

日本に求められる強烈な覚悟

 ボルトン氏の回顧録を読めば、彼が日本の政策や立場について正確に理解し、日本を深く信頼していたことがわかる。かつて元米政府高官が自身の回顧録の中で、これほど日本について肯定的に記述した著作の前例は数少ないだろう。

 ただしその前提として、彼は、米軍が軍事攻撃を行う際には日本もこれに協力するものと理解していた点を踏まえておく必要がある。

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 2017年末時点、朝鮮半島で軍事紛争が再発する確率は、これまでになく高まっていたようだ。ボルトン氏は、同年9月に安倍首相が、米国が武力行使を含む「あらゆる選択肢」を追求する立場に支持表明したことを高く評価する。だが、ボルトン氏にとって武力行使は単なる威嚇の手段ではない。彼が推奨する北朝鮮核問題の解決方法は、同国の核・ミサイル関連施設等に対する先制攻撃である。1990年代以降、ボルトン氏のこの立場は一貫している。

金正恩委員長 ©時事通信社

 ボルトン氏が日本に期待する役割は、決して生易しいものではない。今後、米国が中国や北朝鮮等との間で軍事的に衝突する可能性が高まるシナリオを想定すれば、このようなボルトン氏の日本に対する期待は、米国の中では必ずしも極端で例外的な考え方ではなくなる可能性を真剣に想定しておくべきであろう。

 安全保障環境の変化とともに、日本には強烈な覚悟が求められている。

 古川氏によるボルトン氏インタビューの詳細は「文藝春秋」9月号および「文藝春秋 電子版」掲載の「ジョン・ボルトン『私が見たトランプの正体』」をご覧ください。

出典:「文藝春秋」9月号

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文藝春秋

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ジョン・ボルトン「私が見たトランプの正体」