安倍長期政権で広がった恣意的な権力行使の行方
安倍政権が内閣人事局を背景に官僚の人事権を掌握したことは「官邸主導」の政治を強化した半面、官僚の過度な忖度を招いたと指摘されてきた(毎日新聞9月7日)。
日経社説(9月5日)は、《問題は、恣意的な権力行使を疑われる事例が相次いだことだ。》と指摘。
社説のタイトルは『政治主導のひずみが生んだモリカケ疑惑』。それでも森友の再調査はしないという菅氏に対して読売社説は、
《長期政権では、公文書の改ざんのほか、記録の廃棄や杜撰な扱いが次々に発覚した。国民に不信感が広がったのは事実だ。
菅氏がいずれの案件も「決着済み」で済ませているのは疑問である。》(9月4日)
ピリオドの向こうならぬ冷や飯の向こうにはこれほどの問題が今もあるのだ。パンケーキのことなんか聞いてる場合じゃない。
菅氏「たたき上げ」のイメージ戦略
さてもう一つ目立った菅氏のキーワード「たたき上げ」。
菅氏は総裁選出馬会見で「私の原点について」語り始めた。秋田県の農家生まれでたたき上げを強調。
では実際に菅氏はどんな家で育ったのだろう。
『総理の影 菅義偉の正体』(森功)を読むと意外なことが書いてある。
《菅の父、和三郎はいちご組合を率いるかたわら、雄勝町議会の選挙に出馬し、町会議員にもなる。地元の名士として、頼りにされる存在でもあった。》(P49)
《巷間伝えられてきた貧しい東北の集団就職とは、かなり事情が異なる。》(P85)
なんか思ってたのと違う。
実際に菅氏にインタビューした森氏は「さしたる目的もなく、問題意識も抱かずに東京暮らしを始めたというのは、正直なところなのだろう」とし、「つまるところ、農業を生業とする地味な東北の暮らしぶりから逃げたかったに過ぎないのである」と結論付けている(P109)。
なんか思ってたのと違う。