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個人情報登録にも限界がある

 ひとつは、オンラインゲーム側の対策でしょう。プレーヤーの個人情報をより厳格に登録させたり、さまざまな技術を駆使して、個人情報や実世界で会おうとするようなやり取りを検出することです。それらの施策を告知して、誘拐犯の意図をくじけさせることも含めてです。

 ただし、コストやビジネスモデルの限界、技術の問題もあります。年齢差のあるプレーヤー同士のチャットをさせないのは、一定の効果もあるかもしれません。しかし親子や、年齢差のある知り合い同士も一緒に遊べなくなります。そもそも、何歳差ならチャットがNGになるのかも判然としません。

 「小学生は小学生だけで遊ぶ」などのアイデアもありますが、オンラインゲームやスマホゲームの面白さが削がれ、ビジネスとして死んでしまう可能性もあります。ゲームをプレーする年齢制限を設けても、女子高生が連れ去られた例があります。18歳以上にしても、大人の女性がだまされて連れ出され、犯人から「親を殺す」などと脅迫されるケースであれば、防ぎようがありません。

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 ゲーム会社がやるべきことはあるでしょうが、すべてをゲーム会社に背負わせるのは無理があります。繰り返しますが、インターネットという技術そのものが「他人の連れ去り」を可能にしているからです。そもそも、どんな堅固なシステムを作っても、犯罪者はそれを潜り抜けるために努力をするでしょう。

 結局のところは、子供を含めて大人も、ネットリテラシー(知識)を向上させ、自らを守るしかありません。現実世界でも知らない人についていくと、事件に巻き込まれる可能性があるのだから、しつこく言い含めるしかありません。子供がオンラインゲームやネットにどう触れていて、どういう考えを持っているか。日ごろから家族で話し合うことが最大の対策ではないでしょうか。

子供をネットから遠ざけるのも限界がある。日々どのようにゲーム触れていて、どういう考えを持っているかを話し合うのが大切 ©️iStock.com

 多忙な親からすると面倒なことですが、法や行政を当てにしても、子供をネットの危険からすぐに遠ざけられるわけでもありません。何よりネットは社会のインフラですから、子供から遠ざけても子供の将来を閉ざすことになりかねません。

 “元凶”は、ツールであるゲームやネットではありません。未成年を狙う「悪意のある者」こそ“元凶”なのですから。