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重大な病気との見分け方は

 原因は特定されていない背部痛だが、予想される発症要因はいくつかある。

 肥満、体の固さ、運動不足、疲労、睡眠不足、精神的ストレス……。

「重いカバンを持って歩く人がオフィスに戻って長時間パソコン作業を続ければ肩が凝る。そこに疲労が蓄積して上半身の柔軟性が失われれば、局所的に負荷がかかって痛みを引き起こすことがあっても不思議ではない」

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原因は特定されていない背部痛だが、テレワークになっても続く長時間のパソコン作業などが要因の1つだといわれている ©️iStock.com

 では、睡眠不足やストレスは、背部痛にどう関与するのか。

「背部痛は人間が持っている自然の回復力で治る疾患。しかし、睡眠不足やストレスはその回復力を下げてしまうので、発症のリスクを高めることになる――という仮説は成り立ちます。ただ、証明ができないだけのこと」

 証明はできなくても納得はできる。

 最後に、いま起きている背中の痛みが「重大な病気」なのか、あるいは「様子を見ていい痛み」なのかの見分け方を磯貝医師に訊いた。

「どんな姿勢をとっても痛みが取れない時、動きに関係なく痛みが続く時は救急要請を視野に入れるべきです。反対に『こうすると痛みが消える』とか『この姿勢ならラクになる』という“逃げ場のある痛み”なら、落ち着いて様子を見ていいでしょう。ただし糖尿病を合併している人は痛覚神経そのものに異常があって、重篤な病気でも症状が非常に軽いことがあるので注意が必要です」

 ちなみに心筋梗塞や大動脈解離などは痛みが起きる1秒前までは何の症状もない。Oさんの経験した背部痛も突然の激痛だった。

 一方で、徐々にじわじわっと起きる背部痛もある。急性膵炎や胃炎、十二指腸潰瘍、アニサキス症などが背中の痛みとして出ることがあるのだ。

 一口に「背中の痛み」といっても様々だ。

 のっぺりとした背中にも、色々と苦労はあったのだ。

 Oさんはいま、「なるほど、勉強になるな……」と自画自賛しながら、この原稿を書いています。