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「伊勢谷は大麻をやっている」という証言

 すると、薬の売人や遊び人などから、「伊勢谷は大麻をやっている」という話が何度も上がってきました。当時の伊勢谷は、まだ芸能人としてはそこまで大物ではなかったので、彼らも軽い気持ちで名前を口にすることができたのかもしれません。

 私は「芸能界と薬物」についての取材を長く続けてきた記者なので、「◯◯が薬物をやっている」という証言が、ただの噂話に過ぎないのか、それとも確度の高い情報なのかは、経験上だいたいの見当がつきます。その感覚で振り返ってみても、やはり当時の疑惑は限りなくクロだった、と今でも考えています。

2001年当時の伊勢谷容疑者 ©AFLO

 ただ、取材していたのは私だけではなく、その頃は嗅覚の鋭い記者が何人か、同様に彼の薬物疑惑を追っていました。しかし、私たちはあくまで記者に過ぎず、警察のような捜査ができるわけではないので、結局は売人や周辺人物の証言以上の証拠が手に入らず、この話は“疑惑”のままで立ち消えになってしまったのです。

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末端価格で12万円相当の大麻

 それからも伊勢谷の薬物疑惑は噂が立っては消え、立っては消えという状況を繰り返していたのですが、その後彼がNHKの大作ドラマに出演した際に、私は「もうやめたのかな」と思ったんです。2009年には『白洲次郎』、2010年と2015年には大河ドラマ(『龍馬伝』『花燃ゆ』)に、伊勢谷は出演していました。

 その頃、とある飲みの席で、私は冗談交じりに「伊勢谷を使って大丈夫なんですか? 薬物疑惑もあるのに」とNHKのドラマ関係者に聞いたことがあるのですが、そのとき相手は「そんなのただの噂でしょ」と答えたんです。そんなやり取りもあって、彼の薬物疑惑は時間とともに薄れてきた……というのが私の実感でした。

伊勢谷容疑者が主演を務めた『白洲次郎』

 ただ、今回の逮捕を受けて思うのは、20年前のあのとき、彼が本当に薬物をやっていたのであれば、その時点で捕まっておくべきだった、ということです。そこで逮捕されていれば、伊勢谷もここまでの常習者にはならなかったのではないでしょうか。彼の自宅からは、乾燥大麻を巻く“巻紙”が約500枚見つかったと報じられています。また、押収された大麻の量は20.3グラム。これは実に40回分に当たる量で、大麻は現在1グラム6000円と言われていますから、末端価格で12万円相当です。