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「10年引きこもりでもうちの子は働ける…」1600人以上を支援したNPO関係者が語る”引きこもりのマッチング”

『コンビニには通える引きこもりたち』より#1

2020/09/15
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「引きこもりは家族だけの問題」という思い込み

(事例3)
母「子どもが引きこもって10年になるんですが、こういう相談をするのは初めてです。恥ずかしいので、親戚にもご近所にも、誰にもこの話はしていません」

(事例4)
母「私たちだけではもう無理よ。支援を頼みましょうよ」
父「他人を入れるなんてとんでもない! 私たちで何とかしますから支援は結構です」

 事例4のように、夫婦で相談に来て意見が割れることは珍しくありません。父親が拒否する場合と、母親が拒否する場合の両方ともあります。

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©iStock.com

「引きこもりは家族の問題」「家族で解決すべきもの」と言われていた時代がありました。「子どもが引きこもるのは親の育て方が悪いからだ。だから親が何とかすべきだ」という考え方です。当時は社会の論調がそうでしたし、実際どこかに相談に行き、育て方を責められた方もいます。結局どうにもできず、我が子の引きこもりをただ隠して、時間だけが過ぎているケースは相当な数にのぼるはずです。

 私たちは1994年の活動開始当初から「引きこもりは社会の問題。家族をひらいて他者を入れて解決しましょう」と訴え、「家族をひらく」を活動理念に掲げ続けているのですが、なかなか受け入れてはもらえませんでした。ここ最近になってやっと「親だけで抱え込んではいけない」「他者を入れるべき」という意見を言う人が増え、流れが変わってきたと感じます。子どもが10代20代の若い親には、「引きこもりは外に相談していいもの」という考え方がだいぶ浸透し、かなり早い段階で相談にみえます。

 ですが子どもが40代以上という親の多くは、昔ながらの考え方が染みついています。我が子の状況を家族以外に話したことがない人などは、匿名の相談の電話をするだけでも、相当な決心が必要です。「親の育て方のせいじゃない」「恥ずかしいことじゃない」「誰かに相談してもいい」「誰かの手を借りてもいい」と思ってもらうこと。高年齢の親の多くにとっては、まずはこれが最初の大きな一歩になります。